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サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第2回:市場の流儀 ―ネギとパクチーの謎―

2026/06/13

野本瑞穂のサイゴン雑記

サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第2回:市場の流儀 ―ネギとパクチーの謎―

— Vol. 02 —

第2回:市場の流儀 ―ネギとパクチーの謎―

市場の流儀 ―ネギとパクチーの謎―

Xin chào。街の拾いものを書き留める「サイゴン雑記」。
第2回は、ローカルの八百屋さんで買い物をすると、最後にポンっと袋へ入れてくれる”あの野菜”の話です。

✦ ✦ ✦

🎧 まずは、こちらの音を少し聴いてみてください。

音声QRコード #02

#02 yaoya

※QRコードからもお聴きいただけます。

なんの音かわかりましたか?
これは、いつもの八百屋屋さんでの会計風景です。

ガサゴソ。

品物をビニ袋に入れてくれる音。

「姉さん、8万ドンね〜」

そして間を置いて

「これいる?  hành lá ハイン ラー、 ハイン ラー!」

そう、店主が差し出したのは、ネギでした。

30代くらいの夫婦が営む小さなお店は商店街の一角にあります。早朝6時には開店。
お昼には棚がスカスカになるほどの人気店です。
にこやかで感じのいい夫婦とのやりとりは、片言のベトナム語を実践練習できる場でもあります。

でもここまでくるには、ちょっと時間がかかりました。

 

というのも、ローカルの市場、最初の頃は怖さを感じたこともしばしば。

市場の女性は強気です。
数字が聞き取れない。
少量だけ欲しいと言いにくい。
「それだけ?」みたいな顔をされることがある。
市場のおばちゃんの勢いに負けて、余計なものまで買ってしまうこともある。
とにかく押しがつよい。

ということで、市場へ行くには気合を入れつつ出かけるも、今日もダメだった〜と打ちひしがれて帰宅することも度々ありました。

でも、そんな時期を経て辿り着いたいきつけで、毎回、日本との違いを感じる点があります。それは、品物を袋に入れてくれ、最後にやってくる。

ネギとパクチーコンビです。

頼んでいないのにネギあるいはパクチー。
いや両方セットで、
ポン! と袋へ入れてくれる。

最初はオマケ? お釣りがわり? 計量しているので値段の微調整かなと思いました。

ただ、しばらく通っているうちに、なんだかそうではなさそう・・・とモヤモヤしてきた。

“なぜベトナムの八百屋さんは、最後にネギとパクチーを渡すのだろう?”

あれこれ考えていたら、日本でいうとアレのこと? が見えてきました。

アレ、それは”お刺身についてくる、ツマや大葉のこと”

刺身が入ったトレーを見て
“やった〜、大葉サービスしてくれた〜” とは思わない。

美味しく見える、食べるための一部であって、刺身の盛り合わせにはなくてはならない存在。

つまり、ベトナム料理にとって、ネギやパクチーは単なる野菜ではないのでは?
スープにも。炒め物にも。麺にも。
最後に少し散らすのがお決まり手順。
これにて、料理が完成! そんな合図みたいなもの。
量は少ないけれども、これがなければ整わない、そんな存在。

ということで、最後にくれるネギとパクチーの最強コンビ。
あれはオマケではない。お釣りでもない。
ベトナム料理にとって、ないと落ち着かない定番の見守り野菜。

「今日もごはん、おいしく作ってね〜」という店主からの挨拶がわりかな、と思っています。

8万ドンのお野菜とネギ

▲ この日はこれで8万VND=480円くらい。ネギは普段の倍! 多めにくれました。

🧺サイゴン暮らしメモ:ローカル「行きつけ店」を見つけるコツ

  • ✓ 早朝スタート、午後には閉まりそうな店(鮮度良好な品物を扱うため人気)
  • ✓ 少量買いを歓迎してくれる、欲しい分だけゲットできる店(半分や4分の1など快く切ってくれるサービス)
  • ✓ 漬物や蒸し野菜などがあるお店は工夫上手
  • ✓ 店主との相性(異性を選ぶと、あたりが優しいことも…)
  • ✓ ニコニコ現金払いが基本、細かいお金、持っていこう!

— Next —

次回は——オーダーメイドか既製服か、ベトナムファッションの変化について。

サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第2回:市場の流儀 ―ネギとパクチーの謎―

野本瑞穂(NOMOTO MIZUHO)

執筆者

野本瑞穂(NOMOTO MIZUHO)

自己紹介
2021年よりホーチミン在住。 日本では20年以上、テレビの構成作家、ラジオディレクターとして番組制作に携わる。直近ではNHKラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」「伊集院光の百年ラヂオ」を担当。これまでに200人を超える作家、音楽家、芸人、研究者らへのインタビューやドキュメンタリー制作を通じ、人々の声に耳を傾け、その人らしい言葉を紡ぎ届けてきた。現在はベトナム・ホーチミンで暮らしながら人々の営みや街の空気を観察する日々を満喫。

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