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ベトナム 原状回復 について、費用・手続き・スケジュール・リスク回避策まで実務に必要な情報をすべてまとめました。 ベトナム 原状回復 の基礎知識 退去前に知っておくべき ベトナム の 原状回復 のトラブル回避策のすべて 「退去時に、想定外の工事費用をオーナーから請求された」「退去日までに原状回復が終わらずペナルティを支払う羽目になった」——ベトナムのオフィス退去時のトラブルは今も後を絶ちません。本記事では、ベトナムの原状回復について、費用・手続き・スケジュール・リスク回避策まで、実務に必要な情報をすべてまとめました。 ベトナム 原状回復 の基礎知識:費用・リスク・スケジュール完全ガイド 1|原状回復(Hoàn trả mặt bằng)とは何か 原状回復とは、テナント(借主)が退去する際に、オフィスを「入居前の状態」または「契約で事前合意した状態」に戻す作業を指し、ベトナム語は「Hoàn trả mặt bằng(=物件を返却する)」といいます。 ⚠️ 日本との大きな違い日本では「経年劣化は貸主(オーナー)負担」という考えが明確になっています。しかしベトナムでは契約書による取り決めがすべてです。「原状回復の範囲」を事前に契約書で細かく取り決めておかなければ、退去時に思いもよらぬトラブルに直面します。 2|ベトナムの原状回復 5つのリスク リスク① 契約書の原状回復条項が不明確「原状に回復する」という一文だけでは不十分です。「スケルトン返却か現況返却か」「各設備(天井・床・間仕切り)の扱い」「追加で設置した照明や空調設備、移設したスプリンクラーや煙探知機の取り扱い、もともとあったブラインドの撤去の有無」など、具体的に記載されていないと、退去交渉が長期化します。 リスク② 入居時の現況記録がない「このガラスとサッシのキズはもともと最初からあったものだ!」——そう主張しても、証拠がなければ交渉になりません。入居時に室内全体の写真や動画を高解像度で記録し、できれば、オーナーと借主の双方が署名した「現況確認書(Biên bản bàn giao mặt bằng)」を作成しておくのがベストです。 リスク③ 原状回復工事期間不足スケルトン区画の返却が必要な場合、例えば200m²未満のオフィス区画は10日間ほど掛かります。返却期限までに工事完了しないと、契約不履行でペナルティが発生するので注意しましょう。 リスク④ 信頼できない業者への発注安価な業者に依頼した結果、仕上がりがオーナーの基準を満たさず、やり直しを命じられるケースがあります。原状回復工事は「安さ」だけでなく、ビル側とコミュニケーションが取れ、スケジュール管理ができる業者を選びましょう。 リスク⑤ 保証金返還のトラブルベトナムでは賃貸契約時の保証金(デポジット)は月賃料の3ヵ月分を預けるケースが一般的です。原状回復が完了しても、オーナーに「傷がある」「基準を満たしていない」などと主張され、保証金が満額返金されないトラブルが頻繁に起きています。話が後で覆らないよう、原状回復後の区画返却立ち会いのやり取りを書面で残しておくなど、防衛策を施しましょう。 3|費用の目安 原状回復工事費用はオフィスの広さや回復条件によって大きく異なってきます。以下はホーチミン都心部のオフィスビルの過去2年間の原状回復工事実績に基づく目安です。お客様はすぐに概算費用を把握したいと思いますが、ビルのグレード、ビルの原状回復条件、現在のオフィスの内装の造り込みの程度など条件がまちまちであるため、スケルトンからのことはあらかじめ理解しましょう。 グレード 概要 ㎡単価目安 ハイコスト Aグレードのビルに多く、大規模区画でスケルトン原状回復要件が最も厳しい区画。ビル基幹システムの専門的な設備工事の回復も含まれ、床天井の広範囲な組み直しまで求められる場合。 USD 80〜130+ /㎡ ミドルコスト 造作物の撤去や表面的な修繕工事がメイン。部分的な天井設備の回復は求められる。 USD 30〜80 /㎡ ローコスト 一部の天井設備や造作物の残置が許可され、壁床の限定的な修繕工事のみ。 USD 10〜30 /㎡ 原状回復工事の主な費用項目 No. 工事項目 英語名 主な内容 1 解体工事 Demolition works 既存壁・天井・床・ブラインド・ロゴなどの撤去費 2 内装工事 Interior Construction /Reinstatement works 内装の復旧に関わる工事で、壁の修繕や再塗装(Wall painting)。床の不陸調整やモルタル均し作業(Touch-up floor / Mortar floor) 3 電気設備工事 Electrical & ELV system 追加照明器具・ネットワーク配線・コンセント撤去、元の照明配線への復旧費 4 空調換気設備工事 Mechanical / HVAC system 吹き出し口・吸い込み口の移設、ダクトやリモコンの元位置への復旧費 5 消防設備工事 Fire fighting system(PCCC) スプリンクラー・煙感知器の移設・撤去。ビル側システムとの再接続設定費 6 管理諸経費 Preliminary works /Other works エレベーター・共有部の養生費(Protection fee)、共用部や区画内の清掃費(Cleaning fee)、廃材搬出処分および車両費(Debris disposal)、監督の現場管理費(Supervision / Site management fee) 4|退去6ヶ月前の検討開始が一般的 原状回復で最も多い失敗はオフィスの引っ越し日の判断ミスによる全体工期不足です。下記は300㎡未満の場合のマスタースケジュールの目安です。オフィスの引っ越しは<原状回復工事>前に行う必要がありますので、現オフィス返却期限から原状回復工事期間を逆算し、引っ越し日を割り出します。そこから新オフィス工事の期間、ビルへの工事申請期間(ビルによる。一般的に1週間~2週間目安)、工事詳細図の作成期間(一般的に5日~14日、規模による)、オフィス詳細打合せ期間、物件選定期間・・・などと遡って全体スケジュールを把握します。300m²未満のオフィスの場合には6ヶ月前からの検討開始を推奨します。300m²~1000m²のオフィスは工期が1.5~2.5ヶ月ほど掛かりますので、さらに遡っての検討が必要となります。特に注意が必要なことは、新オフィスの入居条件に<消防検査の済証発行が必須条件>となっているケースがあり、その場合は特に注意が必要です。必ず初期の段階から内装工事業者へマスタースケジュールを相談することを推奨します。 📅 退去スケジュール早見表(6ヵ月前からの逆算) フェーズ タイミング 主な作業 ①事前準備 退去6ヵ月前 契約書の原状回復条項の確認。オフィス移転のマスタースケジュール検討。 ②概算予算組み 退去4〜5ヵ月前 業者から概算見積もりの取得。再利用家具のめぼし ③工事着工 退去2ヵ月前 新オフィス内装工事に着手、引っ越しと原状回復工事の詳細打合せ ④退去 退去3週間前 引っ越しと原状回復工事の日程FIX。再利用什器の確定 ⑤原状回復完了 退去当日〜2週間後 鍵の返却。保証金の変換手続き。 ⏰ 重要:退去通知期限(Notice期間)は契約書に明記されています(一般的には3ヵ月前通知)。退去の通知期限を過ぎてからのビルへのアナウンスは、ペネルティの対象(デポジット没収)となるケースが多いので気をつけましょう。 5|原状回復で失敗しないためのポイント ① スケジュールがタイトな場合はオフィス内装工事業者へ一括依頼 新オフィスの内装工事、引っ越し、原状回復工事をそれぞれ別業者へ発注するケースがありますが、ベトナムでは特にトラブルの原因となります。内装工事と引っ越しでは、再利用家具や再利用機器の詳細と搬入タイミングで新オフィスの内装工事側との連携が必要です。また、引っ越しと原状回復工事でも、残置物の確認や工事の着手タイミングなど連携が必要です。それらを別々に分離発注すると、情報連携不足でトラブルが発生してしまうことが多いのがベトナムです。現オフィスの返却期限までスケジュールに余裕がない場合には、ワンストップで内装業者へ依頼することを推奨します。 ② インボイスが発行できないケースがあるので注意 ビルによっては、ビルの管理エンジニア達自身で原状回復工事を安く行うことを打診してくるケースがあります。そうした場合、インボイスを発行してもらえないことが多いため、事前に確認いたしましょう。 ③ 契約書や引き渡し時の書類の確認 現オフィスの過去当時の入居時には双方の立ち会いによって、照明器具・スプリンクラー・煙探知機・空調吹き出し口の天井の設備機器の数をビルエンジニアと数え確認した書類が存在します。また、現オフィスの内装工事を着手する前の設備機器の回復工事の内容は工事業者からビルへ確認してもらいます。 6|よくあるトラブルQ&A Q. 居抜きで借りたオフィスには特に注意。退去時、オーナーが「スケルトン返却」を要求。契約書には詳細が書かれていないケース。 A. 契約書に明記されていない場合、テナントに厳密には法的義務はありませんが、一般的には貸主の強いマーケットであるため、保証金の返還でトラブルになるケースがあります。有利に進めるためには、仲介業者を通じて原状回復条件の緩和交渉を推奨します。こうしたトラブルとならないよう、引っ越し先の物件賃貸契約時には「区画返却条件」を予め書面で明確に定め契約を取り交わすようにしてください。 Q. 保証金が返ってこない場合、どう対処すればよいか。 A. まず契約書の保証金返還条項を確認し、オーナーへ書面請求します。それでも応じない場合は、裁判所への提訴または調停機関への申し立てが可能です。弁護士費用との費用対効果を考慮した上での判断となります。 Q. 工事中に追加費用を請求されたら場合はどうすればよい? A. 追加工事費用は、1)解体後に発覚した新たな予期せぬ状況による追加工事、2)ビル側の指導によって新たに発生する費用、3)工事業者の見積もり抜けの主に3つがあります。3)については支払いを拒否することはできますが、ローカル業者の場合には支払うまで工事を中断する業者もあり、注意が必要です。1)と2)のケースでは着手前には想定できないコストのため、一般的に協議の上で依頼主が負担します。 7|退去前チェックリスト ☑契約書記載の原状回復条件と返却期限の確認 ☑入居当時の区画の引き渡し書類(サイン入)をチェック ☑業者見積の取得 ☑退去期限前(通常3ヶ月前)にオーナーへ退去通知 ☑引っ越し日や再利用家具の詳細決定 ☑原状回復工事の進捗チェック ☑原状工事完了立ち会い検査記録の保管 ☑保証金の返還条件、手順、返還スケジュールの確認 CRAFTECによる原状回復サポート CRAFTECは日系企業のベトナムオフィスづくり、引っ越し、原状回復までワンストップでサービス提供をしています。お気軽にご相談ください。 📩 お問い合わせ:https://craftec.vn/contact/ ベトナムの不動産関連情報はJETRO ベトナム情報もご参照ください。
2026/05/03
ベトナム関連
オフィス関連
【連載コラム】視点を変えれば発見がある ベトナムに住んでいるといろんな謎に遭遇します。しかし背景を知ると「そうなのか!」と納得することが少なくありません。ベトナム在住日本人のそんな体験を紹介するミニストーリー。コーヒーを片手に気軽にお読みください。 少額のお釣りをくれない運転手 またお釣りをごまかされた。 久しぶりにタクシーに乗った時のことだ。運賃4万8000ドンに対して5万ドン札を出したところ、運転手が2000ドンのお釣りをくれなかったのである。普段はグラブを使っていて運賃はモバイル決済なので、こういうことはないのだが……。「商売なんだから、お釣り用の小銭はちゃんと用意しておけよ」と呆れながら車を降りた。 宇江城さんはハノイにある日本企業で働く経理マン。赴任して約1か月。ベトナムの居心地はいいが、職業柄もあって、お金の支払いがずさんなのには、どうしても慣れない。スーパーマーケットでお釣りの代わりに飴を渡された時は驚いたものだ。 会社に戻って同僚の日本人社員に今日の経験を話したところ、大いに同情してくれた。 「宇江城さんの違和感は当然だと思う。そういう細かいところにいい加減だから、ベトナムはなかなか後進国から抜け出せないんだよ」 その夜、宇江城さんはカナダのトロントに駐在している大学時代の友人にメールを送り、今日の体験談を愚痴った。ところがである。翌日、友人から返ってきたのは意外な内容だった。 「カナダではお金の端数は切り上げか切り捨てだよ」 例えば、1ドル18セントの物を買って1ドル20セントを払うと、2セントのお釣りはもらえないというのだ。逆も同様で1ドル22セントの物を買う場合は、1ドル20セント支払えばいい。 友人が調べたところによると、カナダでは「1セント硬貨をなくすと、1年間で日本円にして約9億円あまりのコストが削減できる」という試算を元に、2013年に政府が1セント硬貨を廃止し、「二捨三入、七捨八入」のルールが導入されたそうだ。友人曰く、 「ベトナムでお釣りをくれないのは、カナダとは違う理由だとは思うけど、そのほうが経済効率はいいんじゃないかな。少なくとも僕は、カナダ方式のほうが居心地がいいよ」 宇江城さんはさっそくネットで検索してみた。少額硬貨の廃止を法律で決めた国に、事実上廃止された国まで含めると30か国を超えるではないか。なんと日本でも「1円硬貨・5円硬貨廃止」が検討されているという。 翌日のことである。路上の麺屋で宇江城さんはフーティウを食べた。値段は5万4000ドン。ところが手元には5万ドン札と50万ドン札しかない。宇江城さんが困っているのを見た店主は「いいよ、5万ドンで」と4000ドンをまけてくれたのである。 タクシーでお釣りがもらえなかったときは、「こんなことをして小銭稼ぎをしようだなんて、姑息だな」と感じた。でも実は違うんじゃないか。ベトナム人のおおらかな性格、そして彼ら流の経済的合理性ゆえなのではないか。今、宇江城さんは、そんな風に感じている。
2026/04/14
中安昭人の連載コラム
ベトナムの オフィス内装 にかかる工事費・什器費の会計処理は、日本とは異なるルールが適用されます。ベトナムでオフィスを開設・リニューアルする際、内装工事費や什器購入費は大きな金額になりがちですが、その費用をどのように会計・税務処理するかを正しく理解しておけば、コストを適切に分散でき、目先の損益への影響を抑えることができます。本コラムでは、賃貸オフィスを前提として、内装工事費と什器費の処理方法をわかりやすく解説します。費用の施工サービス詳細や施工事例もあわせてご参照ください。 ベトナム駐在期間に直面する方も多い、オフィス立ち上げや移転、リノベーションの重大任務。思いもよらずそんな重責を負うことになってしまった方が心がけるべき会計税務処理について、ベトナム最大の日系会計事務所I-GLOCAL CEO 實原氏にポイントをわかりやすく解説していただきました。 〜 費用が分散される仕組みと、安心して予算を検討するためのポイント 〜 💡 まとまった額のオフィス工事費をかけても、会計上の費用は数年に分散されます。 たとえばオフィス工事に500万円かけても、5年で按分すれば年100万円の費用計上。 目先の損益への影響は、思ったより小さいのです。 ベトナムでオフィスを開設・リニューアルする際、内装工事費や什器購入費は大きな金額になりがちです。しかし、その費用をどのように会計・税務処理するかを正しく理解しておけば、コストを適切に分散でき、目先の損益への影響を抑えることができます。本コラムでは、賃貸オフィスを前提として、内装工事費と什器費の処理方法をわかりやすく解説します。 費用の施工サービス詳細や施工事例もあわせてご参照ください。 1.工事費用の処理方法 原則:前払費用として期間按分(費用の分散) まず、賃貸オフィスの内装工事費は、自社の建物ではないため固定資産にはなりません。原則として「前払費用(繰延資産)」として計上し、賃貸期間や使用見込期間にわたって費用を分散させます。 【例】内装工事費500万円 / 賃貸期間5年の場合 会計上:5年で按分 → 毎年100万円の費用計上 税務上:最長3年で損金算入 → 年約167万円が損金に 会計より早く損金算入できるため、税負担の軽減効果が先に来ます。 例外:固定資産として計上するケース 以下の条件をすべて満たす工事部分は、固定資産として計上し、耐用年数で減価償却します。 ◆ アップグレード(生産性・品質・効用の向上など)に該当すること ◆ 独立した資産(機械・設備等)として識別できること ◆ 固定資産の3条件(後述)を満たすこと 固定資産として計上した場合、以下の耐用年数レンジで減価償却します(会計上・税務上とも通達45/2013/TT-BTC の範囲内で設定)。なお、間仕切り・天井・床などの内装造作は単独では使用できないため、通常は固定資産として独立計上できません(自社所有建物のアップグレードとして扱われます)。 工事・設備の種類 耐用年数レンジ 備考 電気設備(電源・照明など) 7〜15年 通達45/2013/TT-BTC 空調設備 6〜15年 通達45/2013/TT-BTC エレベーター・昇降設備 6〜10年 通達45/2013/TT-BTC 通信・情報・電子機器設備 3〜15年 通達45/2013/TT-BTC なお、固定資産として計上するには、工事内訳が判別できる証憑(インボイス明細・契約書等)が必要です。「内装工事一式」などインボイスの記載が一括の場合は、前払費用として期間按分の処理となります。 💡 実務上、工事費の大半は前払費用処理になります ベトナムでは「内装工事一式」でインボイスが発行されるケースが多く、固定資産として個別識別するのが難しいため、前払費用として期間按分するのが実務上の主流です。 工事費の中で固定資産計上になるのは、電気・空調設備の取付など独立識別できる設備に限られます。 2.什器費用の処理方法 固定資産として計上される3つの条件 一方、デスク・椅子などの什器は、以下3つの条件をすべて満たす場合、固定資産として計上し、前払費用より長い期間で減価償却できます。 ◆ 将来にわたり経済的便益を受けられること ◆ 1年を超えて使用できる資産であること ◆ 取得価格が3,000万ドン(約18万円)以上であること 3条件を満たさない什器は、前払費用として期間按分(税務上は最長3年)します。少額の場合は一括費用処理も可能です。判定は1品ごとに行うため、複数まとめて購入しても合計金額では判定できません。一般的なオフィスチェアや机は1点で金額要件を下回ることが多く、実務上は前払費用または一括費用処理となるケースが大半です。 💡 什器が固定資産になるケースは限られます 固定資産の判定は1品ごとに行うため、複数まとめて購入しても合計金額では判定しません。 一般的なオフィスチェアや机は1点で3,000万VND(約18万円)を下回ることが多く、前払費用または一括費用処理になるケースが実務上は多数派です。 高額な家具・大型機器など、1点で金額要件を超える什器のみ固定資産計上となります。 前払費用として処理する場合の按分期間について なお、按分期間は「合理的な使用見込期間」であれば任意に設定できます。実務上は税務上限の3年に揃えるケースが多く、管理が簡単です。理論上は5〜7年まで設定することも可能ですが、長くするほど税務当局への説明責任が生じるため、3〜5年が現実的な範囲です。 代表的な什器の耐用年数(参考) 什器の種類 耐用年数レンジ 備考 椅子、机、テーブル、棚、カーテンなど 4〜25年 通達45/2013/TT-BTC テレビ、プロジェクターなど 3〜15年 通達45/2013/TT-BTC パソコン 3〜8年 通達45/2013/TT-BTC 3.処理方法のまとめ 前払費用として処理 固定資産として処理 工事費用 ▶ 原則処理 会計上:賃貸期間等で期間配分 税務上:最長3年で損金算入 ▶ アップグレードかつ独立資産で3条件を満たす場合 固定資産計上 → 耐用年数で償却 (電気7〜15年・空調6〜15年等) 什器費用 ▶ 3条件を満たさない場合 会計上:使用見込期間で期間配分 税務上:最長3年で損金算入 ※少額なら一括費用処理も可 ▶ 1点で3条件を満たす場合 (1点3,000万VND以上など) 固定資産計上 → 耐用年数で償却 ※実務上は少数派 (内装工事のご検討段階からCRAFTECへ無料相談いただければ、会計処理判断もスムーズに。) 賃貸契約が5年であれば、工事費用も什器費用も、会計上はほとんどのものを5年にわたって費用按分することが可能です。まとまった額の投資でも、年あたりの費用計上額は思ったより小さくなります。また税務上は最長3年での損金算入が認められるため、会計上の費用計上より早く税負担の軽減効果が得られるという利点もあります。 理想のオフィスづくりを、安心して進めていただければ幸いです。費用処理の判断に迷ったときは、お気軽に専門家にご相談ください。 本コラムの監修:I-GLOCAL CO., LTD.(ベトナム最大の日系会計事務所) (CRAFTECでは、ホーチミン市内のオフィス内装設計施工サービスをワンストップで提供しています。移転・リノベーションのご相談は無料相談フォームからお気軽に御相談ください。毎年日系企業30社以上のオフィス施工実績を重ねております。)
2026/03/23
ベトナム関連
オフィス関連
マネジメント
【連載コラム】視点を変えれば発見がある ベトナムに住んでいるといろんな謎に遭遇します。しかし背景を知ると「そうなのか!」と納得することが少なくありません。ベトナム在住日本人のそんな体験を紹介するミニストーリー。コーヒーを片手に気軽にお読みください。 第2回:賑やか過ぎる結婚披露宴 「どうしてこんなにうるさいんだろう」 ベトナム人社員の結婚披露宴で、最初に出てきたカニと溶き卵のスープを飲みながら、井戸さんは独りごちた。ここはホーチミンシティ中心部にあるレストラン。バンドの生演奏で隣の人との会話にも苦労する状態なのだ。日本では閑静な住宅街で暮らして来た井戸さんにとっては拷問のような時間だった。 翌日、同じ披露宴に出席していたベトナム人社員のトゥイさんに尋ねてみた。 「昨日の披露宴は賑やかだったよね。いつもあんな感じなの?」 「あれくらいは普通ですよ」 え? あれで普通とは! 「日本の披露宴はとても静かなんだよ」 「えー! それって寂しくないですか?」 トゥイさんは目を丸くした。N1を持っていて流暢な日本語を操る彼女も日本の結婚披露宴は未経験らしい。驚いたことに、にぎやかなのは、結婚披露宴だけではないと言う。 「先日、祖父のお葬式があったんですけど、家から棺を運び出す時には楽隊を呼んで、太鼓やラッパで盛大に送り出しました。だって静かだと亡くなった方が寂しいでしょうから」 日本では厳かに儀式を執り行うのを良しとするが、ベトナムでは違うらしい。結婚や葬儀など広い意味で人を送り出す儀式は、「にぎやかに」が基本だそうだ。 「でもベトナム人の中でも、若い人を中心に、もう少し静かな披露宴を求める人が増えているそうですよ。SNSで見栄えがするおしゃれな披露宴に、大音量は合わないですしね」 なるほど、こんなところにもSNSの影響が及んでいるらしい。 「私の結婚披露宴も音量は控えめにするつもりですから、井戸さんも来てくださいね」 トゥイさんは付け加えた。 「でも親達は『静かな披露宴なんて論外』って大反対しているんですけど」 ベトナムでは結婚は家と家のつながりだという意識が今も強い。それだけに親の意向は大きな力を持つ。静かな結婚披露宴が実現するには、世代交代を待たねばならないのかもしれない。 *文中に出てくる社名・人名はすべて仮名です。
2026/03/15
中安昭人の連載コラム
「オンラインブース」の有効性と「遮音性能」について 活気あふれるベトナムのオフィス環境、Web会議の際、「周囲の話し声がマイクに入ってしまう」「機密情報の会議をする場所がない」「会議室の争奪戦に疲れた」こんな経験をされている方は多いと思います。今、ベトナムの日系企業で、この課題を一手に解決できる「オンラインブース」の導入が加速しています。なぜ今オンラインブースが必要とされているのか、気になる「防音性能」の疑問について、弊社実測データ(D値計測)を元に解説します。 1. なぜ今、ベトナムのオフィスに「個室」が必要なのか [caption id="attachment_846" align="alignnone" width="700"] CRAFTECオリジナルオンラインブース(4名用)- I-GLOCAL様 -[/caption] 【Point 普及の背景】 現在、ベトナムの日系オフィスでオンラインブース設置が急増している最大の理由は、「コロナ禍を経たハイブリッドワーク、の定着によるWeb会議の頻度の爆発的な増加」に対し、従来のオフィス設計のハード面が追いついていないことにあります。 【Reason 求められている理由】 ベトナムのオフィス物件は、音の反響やプライバシーの確保においては脆弱です。 特に駐在員の皆さんは日本本社との定例会議、現地での重要な商談など、「邪魔されたくない」「聞かれたくない」会議は多いはずです。しかし、リモート参加による会議数の増について、現在のオフィスのハード面で会議室の数が足りないというジレンマに陥っております。 自席でヘッドセットをして会議に参加している時、隣席スタッフも電話で大きな声で話し始め、あなたはOnlineでの面談相手に「すみません、周りが少し騒がしくて・・・」などと謝った経験はありませんか?あるいは人事評価や機密プロジェクトの話をするため、本末転倒ですがオフィスの外に出たことはないでしょうか? 【Point:解決策としてのブース】 こうした「音」と「場所」のストレスを、大規模工事でなく解決できるのがオンラインブースです。「あと1部屋、会議室が欲しい」というニーズに、最も手軽で効果的に応えられるソリューションとして選ばれています。 [caption id="attachment_851" align="alignleft" width="1000"] CRAFTECオリジナルオンラインブース(シングル用) - DHG様-[/caption] [caption id="attachment_848" align="alignleft" width="1000"] CRAFTECオリジナルオンラインブース(4名用)-FUJIFILM様-[/caption] 2. オンラインブース導入「3つのメリット」 オンラインブースを導入することは、単に「個室ができる」以上の経営的・実務的メリットをもたらします。 会議効率の向上や集中して機密性の高い業務に取り掛かれることを考えれば、ブース導入は業務効率化への「投資」と捉えられるべきでしょう。 [caption id="attachment_849" align="alignleft" width="1000"] CRAFTECオリジナルオンラインブース(シングル用)-ASICS様-[/caption] 【Reason:生産性と信頼性の向上】 メリット①:労動生産性UP 周囲の視線や雑音を遮断することで、短時間で深い集中状態に入ることができます。資料作成や重要メールの返信など、会議以外にも「高集中業務」にも適しています。 メリット②:コンプライアンスの強化 オープンスペースでは防げない「会話の盗み聞き(意図せず聞こえてしまうケース含む)」を物理的に防ぐことができます。コンプライアンスを重視する日系企業では非常に重要です。 メリット③:印象度のUP 静かなブース内の環境からクリアな音声で話すことは、会議に臨む姿勢について相手へ好印象を与えます。 [caption id="attachment_852" align="alignleft" width="1000"] CRAFTECオリジナルオンラインブース(6名用) - PERSOL CAREER TECH STUDIO様 -[/caption] 3. 【実証実験】 本当に音は漏れないのか?「ピンクノイズ」テストの検証結果 [caption id="attachment_855" align="alignnone" width="500"] 音漏れ計測の様子。ベトナムでは音漏れ計測が行われることはほとんどありませんが、CRAFTECは計測を行い性能を担保しています。[/caption] 【Point:感覚ではなく数値で見る】 「防音」と謳っても、実際どれくらい音が漏れないかは、メーカーや製品によって異なります。今回は、弊社が得意とする造作オンラインブースで行った「音漏れ検査(Sound Leakage Test)」のレポートをもとに検証します。テストは、人間の耳の聞こえ方に近い、公平な測定を行うために、特殊音源と計測アプリを使用します。ベトナムでは、オンラインブースとは名ばかりで、実際には防音性能が足りていないオンラインブースが沢山存在します。弊社も改良を重ねて現在の造作オンラインブースのディテールに行きつきました。 【Example:テストのスペック】 2026年2月7日実施の測定 • 使用音源:ピンクノイズ(Pink Noise) YouTubeの「Pink Noise 10min」を使用。ピンクノイズは「全周波数帯域にわたって均等に周波数が混ざり合った音」であり、低音から高音まで万遍なく防音性能をチェックするのに適しています。 • 計測アプリ:NIOSH SLM 。信頼性の高い騒音測定アプリ「NIOSH SLM」を使用します。これは瞬時の音量だけでなく、等価騒音レベルなどを正確に測ることができるツールです。 • 測定方法: 隣り合った「ブース1」と「ブース2」の片方のブース内で大音量のピンクノイズを再生し、隣のブースへの音漏れを測定し、騒音の差分を算出します。 【Point:数字によるアプローチ】 「なんとなく静か」という主観ではなく、全帯域の音を含むノイズを使って負荷をかけ、ブースの真の遮音性能を数字で証明していきます。 4. 「D値40以上」が示す、会話が“消える”レベルの静寂 【Point:測定結果と判定】 結論から申し上げますと、今回計測されたブースの遮音性能は「極めて優秀(Very low sound transmission)」という結果が出ました。 【Reason:D値(音圧レベル差)の評価基準】 防音性能は「D値」で評価されます。これは「音源となる部屋の音(L1)」➖「受音室の音(L2)」の差で、基準は以下の通りです。 • D ≦ 15:会話の内容が聞こえてしまうレベル • D = 20〜25:会話は聞こえるが、内容は聞き取りにくいレベル • D ≧ 30:良好 【Example:実測データの詳細】 実際の計測結果を見てみましょう。 • ケース1:ブース1で音を出した場合 ブース内で77.8dB(地下鉄車内や怒鳴り声のレベルの音量)のピンクノイズを再生した時、隣のブースは37.5dB(図書館や静かな住宅地レベル)まで減衰。 その差(D値)は40.3dBを記録しています。 • ケース2:ブース2で音を出した場合 同様にブース2で76.0dBを出した際、隣室への音漏れは38.4dBで、D値は37.6dBとなっています。 【Point:ビジネスにおける意味】 基準値である「D=30」を上回る「37〜40」というスコアは、壁一枚隔てて大声で叫んでも、隣では「何か音がしているかな?」のレベルにまでオンラインブースが防音されていることを意味します。 通常のオンライン会議の声量であれば、隣のブースへの会話が漏れる心配はゼロと言ってよいでしょう。 まとめ ベトナムのオフィス環境において、オンラインブースは「あると便利なもの」から、着実に「プロフェッショナルな仕事をするために必要なインフラ」になりつつあります。 実際、CRAFTECが手掛けるオフィスの半数以上の法人様は、弊社のオンラインブースを導入しています。今回のピンクノイズを用いた厳密なテスト結果(D値40.3)は、このブースが単なるブース風のBOX個室ではなく、確かな性能に裏打ちされた「静寂な空間」であることを証明しています。「音漏れ」問題にお悩みの皆さま、ぜひお気軽にご相談ください。
2026/02/10
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ベトナムオフィスはペーパーレス化できるのか? 世界のビジネスシーンでは電子文書化が進んでいます。しかし、ここベトナムのオフィスに目を向ければ、デスクは常に書類の山、バイク便ドライバーが紙の書類の入った封筒の配達や荷受けに毎日オフィスに出入りしています。 「物理的証拠」への過度な依存 ベトナムも電子請求書(E-invoice)の義務化など、政府主導のデジタル化は進んでいますが、契約や発注書類のペーパーレス化は進んでいません。その最大の理由は、「物理的証拠」への過度に依存する商慣習にあります。「原本(Original)に印(Stamp)のある書類が最上位の証拠能力を帯びる」「紙は残る」という古い商意識が色濃く、また税務監査時に「紙で出してください」と言われるリスクを恐れて結局「紙も残しておく」慣例が、ペーパーレス化への足かせとなってます。また、ローカル会社の電子サインの普及率の低さも、双方電子署名による電子保管の機会を阻み、障壁となっています。 インフラとセキュリティへの不安 ベトナムはインターネット普及率こそ高いものの、企業レベルのデータのセキュリティ対策やクラウド活用の理解度は高くありません。「紙の原本を置いておかないと不安」という意識から、ペーパーレス化には踏み切れない企業が多くを占めています。結果として、AIツールを導入しながらも、原本はキャビネットへ眠らせるという、歪なデジタル化が進んでいます。 ベトナムで書類はいつまで保管する必要があるのか? ベトナムの書類保管義務について詳しく見ていきましょう。下記は2026年1月現在(会計法、政令174/2016/ND-CP、改正労働法・個人データ保護法等)の書類保管期限です。ベトナムの税務当局は過去5〜10年分を遡って調査することが一般的で、特に経費の根拠となるインボイスや契約書は一律10年保管運用が安全とされています。電子署名のある電子文書または紙による原本保管が義務ですが、上述のベトナム特有の古い商意識により、オフィスの執務デスクには、現在も「紙の山」があるのが実情でしょう。 会計・税務書類(起算点:会計年度終了日) 最低 5年間 : 会計帳簿の作成に直接使用されない内部管理用の書類。(管理用の入出庫伝票、見積書、社内決裁書など 最低10年間: 会計帳簿の記録、財務諸表の作成の根拠となる証憑類。契約書、インボイス、銀行残高証明書、総勘定元帳、監査報告書、税務申告書など) 永久保存: 企業の歴史的価値・重要性を持つ書類。年度財務諸表原本、国家プロジェクト関連の会計書類、国防・安全保障関連)人事・労務書類(起算点:退職日または作成日) 5年〜10年 : 出勤簿、残業記録、休暇申請、安全衛生教育記録。 70年〜75年:(実質的に長期/永久)従業員の給与台帳、人事記録(履歴書、学歴、雇用契約書、社会保険記録)。 ベトナム公文書局基準で、年金や社会保険の計算根拠書類は長期保管 法務・会社基本書類(起算点:設立日より) 永久保存 : 投資登録証明書 (IRC)、企業登録証明書 (ERC)。会社定款、株主名簿、役員会議事録、出資証明書。ライセンス関係の原本。 運用の重要ポイント 原本保管が原則 : 電子署名がある電子文書を除き、紙の原本保管が義務。 国内保管: 原則としてベトナム国内の事務所に保管。 廃棄の手順 : 期限が切れた書類の勝手な破棄は不可。社内に「廃棄委員会」を組織し、「廃棄議事録」を作成し永久保存。 「手作業」が安価であるパラドックス もう一つの原因は、ベトナムの比較的安価な労働力です。欧米や日本では、紙を管理保管する「人件費」や「オフィス賃料」のコストが極めて高いため、投資をしてでもペーパーレス化を進める経済的な合理性があります。しかしベトナムでは会計や総務スタッフがファイリングして倉庫に運ぶ>コストがDXシステムを運用するコストよりも低く見積もられています。この判断の多くは必要な書類を探し出すまでのロスタイム、保管スペースがオフィス面積を圧迫するデメリットと保管スペースの毎月の賃料、紛失劣化によるコンプラ・リスクを見落としています。 ベトナムでビジネスをされている皆様にとって、本来クリエイティブな業務に割くべきスタッフの労働時間が、紙の取り扱い業務に奪われている実態は、大きな損失と考えるべきでしょう。 今すぐできるハイブリッドな「次の一手」 ベトナムでのペーパーレス化への壁は高く、現実的に非常に困難です。そこで、取り組みやすいのが「セミ・ペーパーレス化」です。「セミ・ペーパーレス化」という言葉があるかどうかはわかりませんが、下記のような一段階緩い基準を設けて社内運用する手法となります。 社内ペーパーレス規則の制定: 税務や契約という対外書類は紙、社内申請承認フローはペーパーレスへ移行。 スキャニングの自動化:AI搭載のOCRで、受け取った紙をすぐデータ化、検索可能にする。「原本至上主義」の再定義: 紙で保管が必要な書類を再定義し、印刷や保管の運用ルールを厳格化。 ベトナムが「紙の山」から解放される日 ベトナムのオフィスが紙の山から解放される日はいつでしょうか?それは、「データの信頼性」を「紙の重み」より高く評するようになれた時だと思います。それがいつになるのかは誰にもわかりません。 あなたのデスクに積まれている「紙の山」は一気に崩すことはできません。今行うべきことは、セミペーパーレス化のマネジメントによって紙の山を低くする試みこそ現実的であると言えます。
2026/02/07
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AI 時代、経営者が選ぶべき「勝てる オフィス 」とは? (3/3) 異文化マネジメントの救世主としての AI 最終回は、AI と オフィス 環境を適切に組み合わせることで、 オフィスのマネジメント側のビジネスパーソンとして、AIとオフィス空間をどう捉えてべきか、お話させていただきます。 オフィス内の「言葉の壁」は確実になくなっていく ベトナムでの業務において、最大のボトルネックの一つは間違いなく言語でした。 しかしこの数年のAIの進歩で言葉の障壁が急速に低くなってきています。例えば、オフィス内のデジタルサイネージやチャットツールにAI翻訳を組み込めば、日本人経営者のメッセージを、ニュアンス含め瞬時にベトナム語で全社員とオフィスで共有することも簡単にできます。 また、会議にリアルタイム翻訳システムを導入すれば、通訳を介さずにスタッフと熱量の高い議論もできます。 オフィスという空間に「言葉のストレスを感じさせない仕組み」を埋め込むことで、少数の日本人を含む組織のコミュニケーション能力は劇的に向上します。 また、社内のミーティングの全議事録を日々AIに読み込ませていき、定期的に全ての会議をAI分析し、業務改善の指針を立てることも容易です。 求められる新たな要素:オフィスの「メディア機能」とは? ベトナムはジョブ・ホッピングが一般的で、優秀な人材の定着はどの企業でも毎年の経営課題です。 そうした労働市場を相手にするためには、今後は給与条件だけでなく、「ここで働くことが誇らしい」「仲間との時間が楽しい」と感じさせるエンゲージメント醸成の仕組みがより重要になってきます。例えば、オフィスのリフレッシュエリアを広く確保し、ショールームのように自社の技術を魅せるデザインを取り入れるなど、社内ブランディングや社員のモチベーションを高める仕掛けづくりが今後より重要になってくることが予想されます。 オフィスが単なる「事務所」ではなく、ブランドや理念を体感できる「メディア」としての機能が今よりも求められてくるでしょう。 [caption id="attachment_601" align="alignnone" width="1200"] I-glocal様のレセプションのメディア機能は、100名を超えるスタッフが働く様子を来訪者はレセプションの窓から眺め安心することができ、スタッフ様側はI-Glocal社のブランディングに関わっている意識を向上させる仕掛けとなっている。[/caption] [caption id="attachment_409" align="alignnone" width="1200"] CUBE SYSTEM様のメディア的要素の例。来客者が座る会議室から執務エリアのエンジニアスタッフの仕事ぶりが一望できるつくり。業務そのものがブランディングだとゲストと社員が双方向的に感じるオフィス。[/caption] GAやHRに求められる人物像が変わる? ベトナムでは、煩雑な行政手続きや経理処理、備品管理などバックオフィス部門が疲弊しがちです。 ここにもAIの活用が浸透します。 請求書処理、備品発注にAIを活用するようになり、GAやHRスタッフは「社員ケア」や「オフィスマネジメント」などの企業の付加価値を高める業務、エンゲージメント醸成の力が求められていく傾向へ転じることが予想されます。従来型のバックオフィス社員は、地道で細かいタスクを迅速丁寧に仕事することが高評価の対象でしたが、今後は「社員ケア」や「オフィスマネジメント」力への評価ポイントへ比重が移っていくことが予想されます。 「人」を中心に据えたオフィス戦略を 全3回のコラムに共通することは、AIもオフィスもあくまで「人が輝くためのツール」ということです。 AIに任せられることは任せ、人は創造的な仕事を生むコミュニケーションに集中する働き方に変えていく。 そのための舞台の意味合いが徐々に強くなっていくのが今後のオフィスのあり方と予測します。こうした取り組みがオフィス運用の課題となり、近い未来のオフィスの本質となってくるでしょう。 ベトナムという熱気ある市場で、AIという最新ツールと快適なオフィス環境の融合を試みれば、言葉や文化の壁を超えた創造的チームを創れるはずです。 そうした企業のブランディングとエンゲージメント醸成の場としてのオフィスインテリアを考えますと、造作家具がリーズナブルな価格で作れてしまうベトナムでは、オフィスが今後独自の発展を遂げていくことが予想されます。日本的やり方が常に正解と考えがちですが、ここベトナムでは、ベトナム独自のオフィス構築の時代に突入しています。 ベトナムビジネス関連情報:JETRO ベトナムビジネス情報
2026/02/04
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AI オフィス の設計は、AI時代において企業競争力を左右する重要な経営課題です。 AI 時代、経営者が選ぶべき「勝てる オフィス」とは? (2/3) AI オフィス が変えるオフィスの未来:ハードもソフトも変わる AI オフィス が変えるオフィスの未来:ハードもソフトも変わる AIが変えるのは「ソフト」だけではない AIの普及は、オフィスのハードウェアにも変化をもたらします。 書類量、デスク配置、会議室のあり方まで、すべてがAIの普及と密接に関わり、それに合わせてオフィスも最適化されていきます。 今回は、AIの普及によって具体的にベトナムの オフィス がどのように変わっていくのか、動向予測をします。 書類収納スペースが「交流スペース」にベトナムでも変わるのか? まず、一般的に起こるオフィスの変化は紙の書類の激減です。 AI-OCR技術の進化により、手書き文字も含めた書類のデータ化が進みます。 経理の請求書処理や契約書管理などがデジタル化されることで、オフィスから巨大なキャビネットが姿を消します。ですが、これは主に他国での話で、ベトナムでは当面は例外となるでしょう。 一方、経済発展が続くベトナムにおいては、労働者がよりよい待遇と労働環境を求めてジョブポッピングする流れが当面続きます。そうした流れの中、社員流失の歯止め、エンゲージメント醸成の場として、オフィスを魅力的にアップデートしていく流れが強まっていきます。ベトナムでも、社員同士のコミュニケーションを促す「ラウンジ」「カフェスペース」快適な「チェア」、従来以上のオフィス像が売り手市場の労働者に対し求められてきます。かつて書類保管や備品倉庫のために費やしていたスペース賃料を、エンゲージメントを深める場への投資に転換していく流れが他国ではありますが、ベトナムでは今後、異なる独自の展開を見せ始めています。 「会議」の概念が変わり、会議室が減る 書類のストックスペースの観点からすると、ベトナムでは書類保管義務から、劇的な進展は当面起こりません。そこで次に着目するのが「会議室」です。 これまで、情報共有に多くの時間が割かれていましたが、AIの台頭により会議は従来型の「情報共有の場」から「意思決定とアイデア出しの場」へ徐々に変化していきます。 その結果、大きな会議室は一部の大企業以外は、古い働き方の象徴的存在として、徐々にプレゼンスが低下していくことが予想されます。 代わりに求められるのは、少人数ですぐに集まれる簡易的な打ち合わせスペース、マルチな機能を果たせるテーブル、オンラインブースです。 これらは、従来型の会議室の床面積を60%近く削減でき、コストを抑えた上で会議の質的変化に柔軟に対応でき、上昇するベトナム都市部のオフィス賃料に対する特効薬となりつつあります。スペースの新たな充実を図るオフィス内の質的変化の流れは、コロナ禍を経た後のAI台頭によりベトナムで独自の変化をし始めており、非常に興味深い動きと言えるでしょう。 AIがレイアウトを「自動生成」する時代 さらに先進的な動向として、オフィスレイアウトをAIが最適化する未来がすぐに来ることも予想されます。 従業員数や部署構成、出社率などのデータを入力すれば、AIが最適な席配置や動線計画を自動生成します。 「このエリアはあまり使われていないから、ミーティングブースに変えよう」といった提案もAIが行うようになるでしょう。 日本国内では、時間帯や業務内容に合わせてAIが照明や空調を制御し、空間を動的に変化させる「適応型オフィス」の導入も進んでいます。 ベトナムにおいては、ここまでの流れはまだ時期尚早ですが、無駄なスペースを削減し、コストパフォーマンスを最大化するリノベーションの例が着実に増えてきました。 可変性とデータ活用が鍵になっていく ここで重要なことは、AI時代のオフィスとは、一度作ったら終わりの「固定の箱」ではなく、 行動データに基づきアップデートし続ける「可変的な空間」としてのオフィスが増えてくることです。 セールスの固定席を廃止し、部分的なフリーアドレス化やABW(Activity Based Working)を導入することも、その第一歩で、最新の働き方に見合ったオフィスの組み替えという柔軟な発想がさらに経営者に求められくるでしょう。 オフィスのエンゲージメント醸成の取り組みは、日頃からオフィス内装業者へ相談し、近い将来のオフィス改修計画のために意見交換を始めている経営者は確実に増えています。 次回は、ここベトナムという地で、日本人経営者がどのようにAIとオフィスを活用して組織を強くしていくべきか、マネジメントの視点から解説します。 CRAFTECでは、 AI オフィス 時代に対応したホーチミン市内の内装設計・施工を提供しています。無料相談はこちら。 参考:JETRO ベトナムビジネス情報
2026/01/31
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AI オフィス とは何か:AI時代の新しい働き方 AIの急速な進化により、AI時代のオフィスの役割は「作業場」から「創造の場」へと激変しています。 AI時代、経営者が選ぶべき「勝てるオフィス」とは? 第1回:AIと共存する経営戦略とオフィスの「意味」 AIの急速な進化により、オフィスの役割は「作業場」から「創造の場」へと激変しています。ベトナム在住の経営マネジメント層に向けた、AI時代の新しい働き方と、経営戦略としてのオフィスづくりの動向をレポートします。 なぜ今、 AI時代 の オフィス 「再定義」が必要か 近年、日本国内だけでなく世界中で「働き方改革」と「AI活用」が同時進行で加速しています。 特に生成AIの登場は、私たちがこれまで当たり前だと思っていた「仕事」の定義を根底から覆しつつあります。 かつてのオフィスは、情報を集め、書類を作成し、管理する「作業場」でした。 しかし、単純作業やデータ処理をAIが担うようになってきた今、人がオフィスに集まる意味は何かが問われています。 ベトナムで経営の舵を取るビジネスパーソンも、将来のベトナムの急速な労働人口減少や労動意識の変化を肌で感じ始めているのではないでしょうか。 ベトナムにおける将来の労動生産人口の減少がわかっている中、AIを活用した労動生産性の向上は避けて通れない経営課題となります。この AI時代において、オフィスは単なる「低コストな箱」ではなく、企業の競争力を左右していく「投資の場所」へ変化していくことが予測されます。 本連載(全3回)では、AIと共存する未来のオフィス像を、オフィス構築の視点から紐解きます。 AIが担う「作業」と人間が担う「創造」の分離 先に結論を申し上げますと、周知のようにAI時代 の オフィスワーク は「AIに任せる仕事」と「人が行う仕事」に明確に分かれていきます。 具体的には、データ入力、集計、議事録作成といった定型業務は、AIによってすでにその多くが自動化されています。 会議議事録の作成やメールの返信案の作成は、すでにAIが補佐しております。その結果、社員に求められるものは「意思決定」や「創造性」、「感情を伴うコミュニケーション」へよりシフトしていきます。 AIが論理的な正解や高度な推論を瞬時に出す一方、人間は「なぜそれを選ぶのか」という「文脈」を判断する必要性が高まってきます。 つまり、オフィスは効率的に作業をこなす「作業場」の域を超え、「文脈」を判断する者同士が対話し、イノベーションを生み出す「共創」の場へ徐々にシフトしていくことがベトナムでも予想されます。 「行きたくなる場所」でエンゲージメントを向上させる AIが普及し、リモートワークが可能になればなるほど、逆説的にリアルで魅力的な「フィジカル・オフィス」の付加価値は高まっていきます。 その気になれば<どこでも働けてしまう時代>だからこそ、<わざわざ出社したくなるオフィス>を提供する。 特にベトナムのような人材流動性の高い市場においては、魅力的なオフィス環境の提供は、優秀な人材を惹きつけ定着させる「強力な装置」となり得ます。快適なチェア、照明、清浄な空気、BGM、リフレッシュスペース、香り、コーヒーマシーン、スナックコーナー、社員の写真を飾る場所など、五感に訴えるオフィス環境づくりの整備が社員を 「ここで働きたい」と思わせ、今後のAI時代で勝ち残るための経営資源になっていく傾向が増していくでしょう。 [caption id="attachment_566" align="alignleft" width="1200"] RAKUSベトナム様のセカンド・オフィス。リフレッシュエリアにホテルラウンジのラグジュアリーを演出、エンジゲージメントとブランディングを意図的に融合させる試験の場に。[/caption] [caption id="attachment_753" align="alignnone" width="1200"] CRAFTEC新オフィス。執務チェアにUCHIDA社のAJ2とITOKI社のACTの日系チェアを採用。室内に環境音楽が流れ、人間の体内時計に合ったサーカディアン照明を採用。エアバスと同じフィルター性能の空気清浄機を導入し、ベトナム人社員がより働きやすいオフィス環境を自分たちで実験しています。[/caption] オフィスは「企業文化」を醸成する装置としての役割が強まっていく AI時代のオフィスは「企業カルチャーを醸成する装置」へ進化しはじめています。 AIで業務を効率化して生まれた余白の時間を、オフィス内の社員同士の対話やチームコミュニケーションに充てること。 そのための装置としてのオフィスをアップデートしていくことが、これからのオフィスに求められてくることが予想されます。 次回は、具体的にオフィスのレイアウトや機能がどう変わっていくのか、詳細な予測をお伝えします。 CRAFTECでは、 AI オフィス 設計の視点からホーチミン市内での新たなオフィスづくりにも取り組んでおります ベトナムのビジネス環境については JETRO ベトナム情報もご参照ください。
2026/01/20
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【連載コラム】視点を変えれば発見がある ベトナムに住んでいるといろんな謎に遭遇します。しかし背景を知ると「そうなのか!」と納得することが少なくありません。ベトナム在住日本人のそんな体験を紹介するミニストーリー。コーヒーを片手に気軽にお読みください。 第1回:態度が横柄なベトナム人社員 「失礼します」 一礼して会議室を出て行ったキエン君の背中を見送りながら、秋吉さんは「ふー」と深いため息をついた。ここはホーチミンシティ近郊にある工業団地の一画。秋吉さんは工作機械に使う部品を作る大東製鋼のベトナム支社長である。日本語ができるキエン君は、30歳という年齢ながら現場に精通しており、秋吉さんにとって右腕のような存在だ。 一つ気になる点がある。秋吉さんが会議室に呼ぶと、彼はいつも腕組みをして、ふんぞり返りながら話を聞いているのだ。普段は礼儀正しいだけに、その横柄な姿勢が気になってしかたがない。ついさっきもそうだ。秋吉さんが話をしている間、ずっと腕組みを崩さなかった。 彼とは、上司・部下というより、少し年齢の離れた兄弟のような付き合いだ。それだけに、軽く見られているのだろうか。もっと上司らしくしたほうがいいのだろうか。一度は「オレはお前の友達じゃない。ちゃんと姿勢を正して話を聞け」と怒ったほうがいいのだろうか。秋吉さんは着任以来、自問自答を繰り返している。 そんなある日のこと、キエン君が秋吉さんのところに小さな白い封筒を持ってやってきた。 「実は今度、結婚することになりました。秋吉さんにも、ぜひ式に出席して頂きたいです」 それも披露宴だけでなく、教会で行う婚礼のミサから参加して欲しいのだという。会場となった教会の聖堂は300人くらいは入れそうな大きさで、石造りの壁の上部にはステンドグラスがはめ込まれ荘厳な雰囲気だ。ミサが始まり、新郎新婦が神父さんの前に立つのを見たとき、秋吉さんは「あっ」と小さく声をあげてしまった。キエン君と奥さんの2人が腕組みをしていたからである。 新婚旅行が終わって職場に戻ったキエン君に話を聞くと、「はい、腕組み(khoang tay)はベトナムでは敬意を示す姿勢なので、神父さんの前では腕を組むんですよ」。 それを聞いて秋吉さんは「ああ、怒らなくて良かった」と胸を撫で下ろした。 秋吉さんはキエン君に「日本では腕組みは失礼な姿勢なんだよ。実は僕も誤解していてね」とキエン君に説明をしながら、「ベトナム人社員が、自分には奇異に見える行動や態度をとったときには、必ず理由を尋ねるようにしよう」と心に誓ったのだった。 *文中に出てくる社名・人名はすべて仮名です。
2025/12/27
中安昭人の連載コラム