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– Vol. 05 – 第5 回:手のひらに収まるベトナム。ミニチュアの世界 手のひらに収まるベトナム。ミニチュアの世界 Xin chào。(シン・チャオ)。 コラム担当、ライターの野本瑞穂です。 今回は、ふらりと入った雑貨さんで見つけたミニチュア玩具から見えてきた、あれこれについて、ご紹介します。 + + ▲ 雑貨店で見つけた、組み立て玩具 出会いは、かれこれ3年ほど前。雑貨屋さんにディスプレイされていた小さな自転車。 行商のおじさん、おばさんが引っ張る自転車の荷台には、売り物の綿飴やお花、金魚など。 よく見ると、ホーチミンの街で日々目にしている風景が、そのまま手のひらサイズになっていたのです。 「かわいい!」 これ欲しい。でも値段を見ると、一つ30万ベトナムドン(1800円くらい〜2026年9月付)ほど。 ひとつ買ったら、きっと並べたくなる。並べたら、また次が欲しくなる。 雑貨好きには危険な予感しかしない。その日は、いったん手を止めました。 ところがしばらくして、インターネットで同じようなミニチュアを発見してしまい・・・。 しかも「あれ? こっちは安い」 よく見ると、完成品ではなく、自分で作る組み立てキットでした。 「面白そう! 楽しそう!」というわけで、さっそくいくつか、取り寄せてみました。 ▲ 取り寄せた、組み立て玩具 届いたのは「HÀNG RONG(ハンロン)」シリーズの、お肉の焼き肉を使ったバインミー屋台。(豚の焼き肉、ローストポークの屋台ですが中には鶏肉も、この看板との不一致さもベトナムらしいです) 他にも、ベトナムの街で見かける行商や屋台を再現したもので、廃品回収屋さん、ジュース屋さん、 自転車に商品を積んだ行商……。いろいろな種類がありました。 箱には「Trở Về Tuổi Thơ」とあって「子ども時代に帰る」といった意味。 いいじゃないですか〜と、そっと箱を開ける……。 木の板。小さな部品。針金。紙。布。そして、かなり細かい説明書。 豚の丸焼きなんて、指先ほどの大きさ。 屋台の骨組みを作り、色を塗り、看板を貼り、針金を曲げ……。 これは、なかなか手強い。 ひとまず説明書を広げ、部品を眺め、「なるほど」と納得し、そっと、また箱に戻しました。 ▲ 組み立て玩具のキット内容 そして少し忘れかけていたのに・・・最近、書店に行ったらまた出会ってしまった。 雑貨コーナーに大きく紹介されていたのです。 思わず見入って、懲りずに、別の種類も購入。 なぜなら、ミニチュアになっているのが有名な観光名所ばかりではなく、 新聞スタンド、米屋、床屋、フーティウの屋台、バイク修理店、行商……。 いつもみているベトナムの風景が、小さくなっているかわいさに心を持って行かれてしまいました。 これは、ベトナム文化が手のひらに収まるアイテム! 日本にも、小さなものを愛でる文化は昔からある。 『枕草子』には「なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし」とあり、江戸時代には精巧な雛道具。 現代ならプラモデル、食玩、カプセルトイ。 小さなものに惹かれる気持ち。日本人にはなんだかわかる気がします。 日本とベトナム。小さなものを作り、細部まで凝り、それを眺めて楽しむ。 こういうところ、どこか似ているのかもしれません。 ただ、ベトナムで小さくなったのは、屋台であり、行商の自転車であり、街角の食堂。 今日も外へ出れば、その「本物」が街を走っています。 それにしても、こんなものを作ったのはどんな人なんだろう。 小さな世界を作った人 ▲ 組み立て玩具 立ち上げのグエンさん ちょっと調べてみたら「Thế Giới Tí Hon(小さな世界)」を立ち上げた Nguyễn Phúc Đứcさんという人にたどり着いた。 1989年生まれ。建築や美術を専門に学んだわけではなく、DJやマーケティング、配達などさまざまな仕事を経験したという。子どもの頃、父親からもらった木製の小さな家の模型を思い出したことが、この仕事を始めるきっかけのひとつ、だという。 しかも、面白いのは、最初に作ったのがサイゴンではなく、寿司店など日本をテーマにしたミニチュア。 でも、それはなかなか売れなかった。 本人は後のインタビューで、みんな「好き」とは言ってくれるけれど買ってくれなかった、 それは模型に人を動かす「感情」がなかったからではないか、と振り返っていました。 そこで、彼が思い出したのが、自分が育ったサイゴン。 子どもの頃に通った路地の雑貨店を作ってみたところ、今度は大きな反響に。 そこから彼の記憶にあるサイゴンの街を次々と小さく再現していった。 彼が掲げているのは、「ベトナム人に、もっとベトナム文化を愛してもらう」という思い、でした。 なるほど。私が最初に「かわいい!」と足を止めたのも、単に小さいからではなく、そこにいつも見るベトナムの風景、文化を感じ取ったのかもしれません。 だから、このミニチュアには妙に惹かれるのでしょう。 ▲ 飾られた組み立て玩具 今では、完成品もあちこちの場所(雑貨店、書店、ホテルのお土産売り場など)で購入することができます。 日本へのお土産にしたこともあり、喜ばれました。「プラモデル作るのが、好きそう〜」と思う人には、迷わず組み立てキットをお土産に渡したら、とても喜ばれ、本当にきれいに完成させた人もいました。 一方、我が家では――。 箱を開けただけのものが、まだある。 ベトナム文化が手のひらサイズになって、まだ箱の中で出番を待っている。 ……そろそろ、作らなくては。 ✏ 口に出して言いたい ベトナム語 〜雑貨編〜 日本語 ベトナム語 読み方(カタカナ) 小さな世界 Thế Giới Tí Hon テー ゾーイ ティー ホン 子ども時代に帰る Trở Về Tuổi Thơ チョー ヴェー トゥオイ トー 行商 Hàng rong ハン ゾン こんにちは Xin chào シン チャオ – Next – 次回もお楽しみに。
2026/09/17
野本瑞穂のサイゴン雑記
【連載コラム】視点を変えれば発見がある ベトナムに住んでいるといろんな謎に遭遇します。しかし背景を知ると「そうなのか!」と納得することが少なくありません。ベトナム在住日本人のそんな体験を紹介するミニストーリー。コーヒーを片手に気軽にお読みください。 第8回:ベトナム人社員宅で食事をご馳走になる 「工藤社長、今度の日曜日、私の家に来て頂けませんか。両親が昼食をご馳走したいと言っていて……」 招待してくれたのは30代の女性社員・ヴィさん。 「喜んでお邪魔させてもらうよ」 工藤さんは笑顔で承諾しながら、ちょっと気が重たくなった。 彼はホーチミンシティで小さな人材紹介会社を営んでいる。日本人社員は工藤さん1人で、他5人はすべてベトナム人だ。社員達とは公私ともに付き合いがあり、一緒に食事に出ることも多い。今回のように自宅に招かれたのも、一度や二度ではない。 ベトナム人社員宅の食卓に招かれたときに苦手なのが「よそい合い」である。彼が招かれた家庭での食事はいつも、食卓の中央にいくつかの「大皿料理」が並び、それを各自がご飯茶碗に取って食べるというスタイルだった。 ところが、工藤さんが自分の食べたいおかずを取る前に、食卓を囲んだ他の人達が「Ăn đi! Ăn đi!」(食べて! 食べて!)とおかずを載せてくれるのだ。これにはどうも慣れない。 ヴィさんに思い切って相談すると、「そんなの難しく考えることないですよ」と一笑された。彼女曰く、 「あれは、料理を無理強いしているわけではなく、『私はあなたのことを気遣っていますよ』というサインなんです」 「そうなのか……。でも一方的に食べさせられるのは、どうも落ち着かないんだよ」 「ベトナム人でも同じように感じる人はいます。その時は『攻撃は最大の防御』ですよ」 戸惑っている工藤さんにヴィさんが解説してくれた。 「工藤さんが相手のご飯茶碗におかずをよそってあげるんですよ。そうすれば工藤さんから相手への気遣いを示すことができますし、相手からの攻撃も減らすことができて、一石二鳥です」 「でも、嫌いなおかずを渡してしまったら、相手は困るだろう?」 実は工藤さん自身、苦手な食べ物を載せられてしまい、食べるのに苦労したことがあるのだ。 「多くの人は、自分が好きなおかずを人によそいます。同じものをよそい返してあげればいいんですよ。工藤さんが好きなおかずがあったら、それをよそってあげます。そうすると相手も『そうか、この人はこれが好きなんだな』とよそい返してくれるでしょう」 ヴィさんは「私の言ったことが、すべての場面に適用できるわけではありませんが、私の家に来たときには、この戦略を試してください」と笑顔で勇気づけてくれた。おかずを載せられることをゼロにはできないだろう。でもそれが「気遣いを形にしたものだ」と考えると少しは気が軽くなった。 ヴィさんのお父さんは、お酒が好きだと聞いている。「手土産に日本酒でも持って行こうか」、そんなことを考えていると、少しずつ週末が楽しみになってきた。 *文中に出てくる社名・人名はすべて仮名です。
2026/09/15
中安昭人の連載コラム
オフィスがただ働く以上の価値をもつために、私たちCRAFTECはオフィスで過ごす人々がより心地よく働けるためのオフィスがどのようなものかを日々考えています。今回、 アゼアス株式会社様より高機能床材 ReFace(リフェイス)を提供いただき、実際にCRAFTECのオフィスでテストした結果をご紹介いたします。 「美しさ×高機能」がつくる、自由な空間 ReFaceのコンセプトは「美しさ×高機能」。 23色の豊富なカラーバリエーションで 床や壁の表情を空間や好みに合わせて自由に変えられるインテリア性があります。 写真左:CRAFTECオフィスの小上がりに敷かれたReface。 私たちCRAFTECは、自分たちのオフィスを「実証実験の場」にしています。 働きやすいオフィスづくりにトライし続ける私たちだからこそ、自分たちが働いている場所で実証することも大切です。 「汚れにくい」が、毎日のオフィス空間を支えてくれる Refaceの注目ポイントはその多機能性でした。 ベトナムと日本ではオフィス空間の使い方や整理整頓に対する習慣にも違いがあります。 中でも「汚れが付きにくい」「汚れてもきれいにしやすい」のは、日々オフィス空間をきれいに保つための重要ポイントです。「耐久性」「耐水性」「耐候性」「クッション性」など、多方面に際立った機能性を備えるReFaceは、ベトナムのオフィスでも有効な選択肢となります。 ベトナムのお昼寝文化向けの床材や畳に変わる建材としてReFaceは最適解の一つ ReFaceの「高いクッション性」に注目してみましょう。 ベトナムと日本の働き方には、様々な点で違いがありますが、中でも最も大きな違いの1つにベトナムの<お昼寝文化>があります。 ベトナムでは昼食後、オフィスを消灯し、床や椅子で昼寝をする人が多くいます。オフィスの床でヨガマットンやシートなどを敷かずに身体を休めることができるクッション性の高い床材はベトナムでは非常に面白い存在です。 私たちがReFaceを導入したエリアは、パントリーの小上がりスペースでしたので、ローテーブルを囲んで直に座れる休息スペースの床が汚れにくい上にクッション性も兼ね揃えることができ、非常に良いオフィス環境の改善となりました。 ReFaceは現在アゼアス様がベトナムでの取扱いを検討中です。ReFaceをサンプル協賛していただきましたアゼアス様、この場で改めて感謝をお伝えしたいと思います。 ■ReFaceに関するお問い合わせ アゼアス株式会社 ライフマテリアル営業部 機能性建材課 〒111-8623 東京都台東区蔵前4-13-7 Tel 03-3862-9328 AZEARTH VIETNAM CO., LTD. Room 11, 9th floor, ROX Tower, 180-192 Nguyen Cong Tru Street, Ben Thanh Ward, , Ho Chi Minh City , Vietnam ReFace Webサイト:https://reface.page 商品お問い合わせページ:https://www.azearth.co.jp/business/protect/contact/index.php
2026/09/07
NEWS
オフィス関連
【連載コラム】視点を変えれば発見がある ベトナムに住んでいるといろんな謎に遭遇します。しかし背景を知ると「そうなのか!」と納得することが少なくありません。ベトナム在住日本人のそんな体験を紹介するミニストーリー。コーヒーを片手に気軽にお読みください。 第7回:すぐに辞めてしまうベトナム人社員 「トアン君から退職願が出ました」 日本人マネージャーから知らせを受けて、木嶋さんは暗い気持ちになった。木嶋さんは日系人材紹介会社のベトナム法人代表。会社は日系だが、取り引き先のほとんどはベトナム企業で、紹介する人材もベトナム人ばかり。企業と人材の間に立つのもベトナム人社員だ。 ところが社員の定着率が思わしくない。木嶋さんからすると、些細なこととしか思えない理由で、会社を辞めてしまうのだ。 「給料は同業他社と比べて決して低くないはずなのに」 「日本人と違って、ベトナム人に会社への忠誠心を求めるのは無理なのか」 「上司が叱るのは、本人の成長を願ってのことなのに、それが理解されないのはなぜなのか」 いつもの自問自答が始まってしまった。 そこに総務の女性社員ヒエンさんが通りかかった。彼女は確かトアン君夫婦と仲が良かったはず。退職の背景を知っているのではないか。 「ヒエンさん、ちょっといいかな。君、トアン君を知ってるよね」 「はい。彼、辞めてしまうんですってね」 「ほお、耳が早いね」 「彼女の奥さんから聞きました。彼女は私の大学の同級生ですから」 木嶋さんはヒエンさんを別室に呼んで、詳しく話を聞くことにした。きっかけは、日本人マネージャーが、他の社員の前でトアン君を叱責することが、立て続けにあったから。それをトアン君が奥さんに愚痴ったところ、奥さんは引き止めるどころか、退職を勧めたのだそうだ。 「私も働いているから、あなたが会社を辞めても、生活には困らないわ。あなたは今の会社で優秀な成績をあげているんだし、転職先はいくらでもあるはず。気持ちよく働ける職場に変わるべきよ」 木嶋さんは膝を叩いた。ベトナム人の離職率の高さの背景には「共稼ぎ率の高さ」があるんじゃないか。木嶋さんには、上司のパワハラに苦しんでいた時期がある。「オレが仕事を辞めたら家族が路頭に迷う」という気持ちで耐えていた。あの時、妻がトアン君の奥さんと同じことを言ってくれたら、迷わず会社を辞めていたに違いない。 現地法人の日本人社長達と飲みに行くと「ベトナム人はすぐに辞める」という愚痴になることがある。そして離職率の高さの理由を、ベトナム人側に求めていた。しかし違うのではないか。雇う側は、無意識のうちにでも「少々手荒な扱いをしても、給料欲しさに社員は働き続ける」という姿勢を持ってしまっている。それが根本的な間違いだったのではないか。 木嶋さんはヒエンさんに礼を言うと、頼んだ。 「トアン君と直接話がしたい。ここに呼んでくれないか」 *文中に出てくる社名・人名はすべて仮名です。
2026/08/11
中安昭人の連載コラム
– Vol. 04 – 第4 回:ベトナム語が読めなくても、料理本ならいけるかも?! ベトナム語が読めなくても、料理本ならいけるかも?! Xin chào。(シン・チャオ)。 コラム担当、ライターの野本瑞穂です。 今回は、ふらりと入った本屋さんで見つけた一冊の料理本から、目から鱗の体験をご紹介します。 + + 控えめなデザインのベトナム料理本を手に取って ▲ 控えめな装丁のベトナム家庭料理本 いつまでたってもベトナム語はわからない。でも料理本なら写真もあるし何とかなるんじゃない? そんな軽い気持ちで手に取った料理本 『Cơm chay nhà mình có gì?』 ベトナムの家庭のベジタリアン料理本で149,000ドン(約900円)。 150ページ、オールカラー。 今どきのおしゃれな料理本ではありません。写真には少しざらつきがあって、日本でいうと少し昔の料理雑誌のようでちょっぴりレトロ。盛り付けも飾りすぎず、シンプルなコーディネート、 でも、それがいいんです。「これなら私にも作れそう」そんな安心感があります。 ベトナムの人気、料理研究家は?! 著者の料理研究家Dzoãn Vân(ゾアン・ヴァン)さん。Google翻訳でプロフィールを読むと、元教師で文学を教えながら、台所では料理を教えてきた人物。テレビや新聞でも長年活躍する、ベトナムでは有名な料理研究家のようです。 「台所は家の中で一番大切な場所」という、この言葉に購入を決めました。 考える時はいつも台所って思っている私は、首を縦に深く深〜く頷いたわけです。 さらに「家庭の食卓とは何か」というエッセイから始まっています。 翻訳アプリによると、昔、ベジタリアン料理は旧暦の元日、満月の日に寺で食べるものだったそうです。でも今は家庭でも、野菜や果物、豆腐などをベースにもっと自由に、もっと美味しく食べられます。家族のために毎日食べられるシンプルながらも風味豊かな手作りベジタリアン料理を作ろう。そんなメッセージが書かれていました。 そう、ベトナムの大衆食堂には、肉や野菜を使わないベジタリアン食堂もたくさんある。おいしいので体調整えたい時には、よく通っている。「家でも作れたらいいな」。そんな1冊としてピッタリでした。 Chuối sáp kho tiêu ペッパー風味の煮込みバナナ ▲ 料理本に載っていた完成写真 バナナをおかずにする料理、その味は? バナナを生コショウで煮て味を整えるだけ! 簡単そう! 待てよ、どんな味だろ? アジアならではの料理っぽい〜と、ワクワクしてきて、さっそく作ってみようとなりました。 ▲ 市場でバナナを買う様子 市場で料理本を手に食材を求めます。 おばちゃんたちが、寄ってたかってなんか言ってくれて(サップサップと言ってたと後でわかりましたが・・・ここでは苦笑いするだけ)、かたい小さなバナナを買いました。 さぁ材料は揃いました。 サップバナナ、生コショウ、水、ベジタリアン醤油、砂糖、うま味調味料、黒胡椒、油。 作り方は全部で6工程。料理本なので、文章はシンプル。 ただ、ベトナム語との格闘が立ちはだかりまして、わからないことだらけ。翻訳アプリではうまく訳せない部分もあるのですが、ベトナム文化との違いにもぶつかります。 問題はChuối sáp。茹でたバナナ? いや サップという品種のバナナ? 市場でおばちゃんたちは、これこれと指さし、渡してくれたので、料理用バナナはゲットできてる。これを、茹でるってことかな? と勝手に解釈しました。ただ問題は、レシピに茹で方が書いていない。「何分?」「皮付き?」「水から?お湯から茹でるの?」完全に混乱です。 でもこれが面白いんですね。日本の料理本がいかに親切か、よくわかりました。少ないコメントながら適切な言葉選び、表現。それこそ昔は、江戸時代の料理本も、今読むと、決して親切ではありません。現代の料理本には進化を感じます。つまり料理本の作り方には、日本とは違う文化や歴史があるのかもしれません。動画で見ればいいじゃん、と思うかもしれませんが、本から想像しながら、限られた情報で作る料理の中に楽しみもあるのです。 とりあえず、型崩れしないよう15分ほどで取り出してみた。皮を剥いたバナナはねっとり、ギュゥっとした食感。食べたら程よい酸味で美味しい。里芋とさつまいも、じゃがいもの間のような、不思議な食感。 これを調味料といっしょに、コトコト弱火で煮ていきます。 レシピにあった「riu riu」というのが「コトコト」=そよ風? のように、弱火で静かにという意味らしい擬態語ですね。口に出して言いたくなるベトナユ語、すごくかわいい。 さてお味は? 茶色く煮詰まったバナナは、みるからにバナナです。 ベトナムのベジタリアン醤油で甘辛く煮詰めたら、最後に油と胡椒をささっと回して仕上げます。 これはきっと、芋の煮っ転がしだな? と想像しながら味見したら、むにゅう〜と歯触りがあって、 甘辛さとともに酸味と胡椒の風味が、どさっと口の中に。噛むほどに、なんだろうこれ?の疑問が湧く。 そして後から、バナナの筋の苦味が舌をじゅわりぃぃぃ〜と痺れさせる。 ひいき目に見ても、おいしぃ・・・とは言えず、静かに箸を置く。 夜ご飯に食卓に何気なく置いてみたけれど、夫は「何これ〜!」と楽しそうに口へ放り込んだけど 「これはいいや」と言って、二口目はありませんでした。 ただこれはレシピが悪いのではなく、原因は私の理解不足にあることがわかりました。 というのも、その後、丁寧に調べていったら、Chuối sáp は、市場の蒸し器で蒸されて売られているバナナのことだったんです。 Chuối sápの正体 ▲ 市場で売られているサップバナナ そう、ベトナム人にとっては当たり前の蒸しバナナを勘違いして料理していた私。日本語で言うと、さつまいもではなく、蒸かし芋、というものが原材料に入っていたということ。市場で、しきりにおばちゃんたちが、あれこれ説明してくれていたのですね。 ベトナム語の壁を感じてはいますが、料理本から馴染んでいくのも楽しいもの。 Chuối sáp、この単語だけは、もう忘れそうにありません。 ▲ 皮を剥いたサップバナナ ただ日本のレシピのように、気を付けるポイントとしてただひとつ、 バナナの筋はしっかり取る、と書いて欲しかった。 さて次はどのページを試してみましょうか。楽しみが増えました。 ✏ 口に出して言いたい ベトナム語 〜料理編〜 日本語 ベトナム語 読み方(カタカナ) ベジタリアンご飯 cơm chay コム チャーイ ベジタリアン魚醤 nước mắm chay ヌゥオック マム チャーイ 弱火 lửa nhỏ ル〜ア ニョ〜ォ コトコト riu riu ズィウ ズィウ 煮る Kho コー – Next – 次回は——手先の器用な国だから?! ミニチュオ・プラモデルの世界。
2026/08/09
野本瑞穂のサイゴン雑記
– Vol. 03 – 第3回:仕立てる楽しみ、選ぶ楽しみ。ベトナムファッションの現在地 仕立てる楽しみ、選ぶ楽しみ。ベトナムファッションの現在地 ベトナムで暮らしていて、一番贅沢だと思うこと、それは服を仕立てることの身近さ、です。 + + 市場や生地店で好きな布を選び、街の仕立て屋さんへ持ち込む。まだ画像生成AIなどなかった頃には、下手な絵を描いたりしながら、「袖はこのくらい」「丈はもう少し長く」と身振り手振りを交えて伝えていきました。 その結果、思い描いたものと少し違う服が出来上がることもあったけど、これもまた、ベトナムらしさ。好きな生地が自分だけの一着になる喜びは大きいものでした。 身長154センチの私と、182センチの夫。 チビとノッポの夫婦にとって、既製服には小さなストレスがつきまとう。 私には丈が長く、夫には袖や裾が足りない。 それが、自分の体に合わせて作ってもらうと、するりと収まる。服が身体に合うというだけで、 こんなに気持ちがよいものなのかと感動したのを覚えています。 生地代と仕立て代を合わせても、ワンピース一着が5000円ほどで出来上がることもあり、 日本では少し特別に聞こえるセミオーダーが、ベトナムでは日常のすぐそばにある。 今も街には、使い込まれたミシンがある。 小さな仕立て屋さんや、お直しを請け負う店先で、縫い手たちはこまめに手を動かしています。 私たち夫婦にも、近所にお願いするお気に入りの仕立て屋さんがいくつかあるんです。 けれど、ここ2年ほどで、街の服の景色が少し変わってきました 仕立て屋さんの魅力が薄れたのではありません。 既製服が、急に面白くなってきた、そんな感じです。 若い人たちの装いにも変化を感じます。 以前よりも、黒、白、グレー、ベージュといったモノトーンが目について 大きなロゴやキャラクター、目立つ柄に頼るのではなく、生地の質感やシルエット、 デザインで見せる服が増えてきた。 もちろん、これは私がホーチミンの中心部で見ている限りの印象です。 それでも、街の空気が変わったと感じるには十分でした。 ベトナムは世界有数の縫製大国。 その土台の上に、今、ベトナム発のブランドが次々と育っているようです。 海外でも知られるCONG TRI、ミニマルで構築的な服を見せるGIA STUDIOS、若い世代の感覚を映し出すFANCì CLUB。海外のランウエイやセレクトショップで名前を見かけるようになってきた。 そして、現在のホーチミンやハノイには、独自の世界観を打ち出す旗艦店やセレクトショップも増えています。 その変化を特に実感したのが、ホーチミン中心部、 Union Squareの地下に広がるセレクトショップ。 フロアには服だけでなく、靴、時計、バッグ、雑貨、香水まで、ファッション全般のアイテムが並ぶ。それぞれの売り場は独立しながら、緩やかにつながっている。目的を決めずに歩き回り、気になったものを手に取る楽しさがある。 無機質でモダンな空間に、低く静かに流れるミニマルなエレクトリック・サウンド。 「ここ、本当にベトナム?」 一瞬、そんな気分になる。 数年前には、こんな空間を想像していなかった。 買い物の仕組みも面白い。 気に入った服が決まると、店員からバーコードの付いたカードを渡され、レジで待つよう案内される。売り場に飾られているものは試着用で、在庫があれば倉庫から新しい商品が届く。 その商品を運んでくるのは、ヘルメットをかぶり、キックボードに乗った店員たち。 広いフロアを、商品を入れたバッグ持ってスーッと滑り込んでくる。歩かないですね。日本ならまず安全面が話題になりそうですが、バイクが日常に溶け込んだベトナムらしい軽やかさがあって親近感。 届いた服を手に取り、改めてサイズや縫製を確認してからお会計。明快です。 この店で、私が選んだのはベトナム発ブランドの二着。 一着は、MONO TALKの淡いグリーンのシャツ。 胸元を細やかな美しい襞で立体的に見せている。派手ではない。けれど、着ると柔らかな布が身体の周りで静かに動く。価格は約4800円。 もう一着は、DECEMBER CHRISの茶色いノースリーブトップス。 こちらは張りのある生地を使い、皺の寄せ方と裾のふくらみで立体感を作っている。 最近人気のバルーン型ですが、控えめに膨らませ、身体に沿って自然に立ち上がり、布量を計算していることが伝わってくる。価格は約8000円。 どちらも、「ベトナムにいるから着る服」ではない。日本へ帰るときにも持っていきたい、 普通におしゃれな着として着たい! そんな気持ちが動いて迷わず選んだもの。 この時私は、完全に日本のセレクトショップで買い物をしているような気分。 シルエットを眺め、生地に触れ、裏側の縫製を見る。 どう着ようかと考え、最後に値札を確認する。「え?」、一瞬、脳がバグる。 「あ、ここはベトナムだった」と、値段を見て思い出す。 もちろん、ベトナムでは決して誰にとっても安い価格ではない。それでも、日本で同じように生地や立体裁断に工夫を凝らした服を探す感覚で見ると、うれしい戸惑いが残る。 以前なら、気に入った形を見つけたら、生地を探して仕立て屋さんへ相談していたかもしれない。今は、そのまま着たいと思わせる既製服がある。そして服を買ったというより、ベトナムの変化を持ち帰った、という気持ちが湧き上がる。 仕立て屋さんで、自分の身体にぴったり合う一着を作る喜びと、 若いデザイナーが生み出した完成された服を、自分の感覚で選ぶ喜びがある。 どちらかが消えたのではない。服を楽しむための枠が、ひとつ増えた。 仕立てる国から、選ぶ国へ。 正確には、仕立てる楽しさを残したまま、選ぶ楽しさも育ってきた国へ。 ベトナムファッションは、まだ変化の途中段階。 このデザインと価格のバランスも、数年後には変わっているかもしれない。 そう思うと、また一着、手に取ってしまいそうにもなる。 ベトナムでの買い物は、ますます楽しい。 そして、これからどんな服が街に現れるのか。しばらく目が離せませんね。 – Next – 次回は、ベトナム料理本が楽しい! です。
2026/07/17
野本瑞穂のサイゴン雑記
ホーチミン オフィス移転 を検討する日系企業様向けに、賃料値上げリスクを回避しながらコストを抑える具体策を解説します。 ホーチミン オフィス移転 に関するご相談はCRAFTECへお気軽にどうぞ。 【2026年最新版】ホーチミンのオフィス賃料値上げにどう立ち向かう?移転コストを劇的に下げる「最強の移転戦略」 2026年第1四半期現在、ホーチミン市のオフィス移転マーケットは過熱状態が続いています。オフィス契約の更新時期を控え、貸主からの「賃料値上げ要請」に頭を悩ませている駐在員や企業担当者の方も多いのではないでしょうか。 本コラムでは、ベトナムで10年近くに渡り数々の日系オフィス賃貸仲介に携わってきたSTARTSベトナム代表の星氏が、最新のオフィス市場の動向を紐解きながら、値上げリスクを回避し、移転コストを早期に回収するための具体的戦略をわかりやすく解説します。 1. 「貸主優位」が続くホーチミンのオフィス市場 現在のホーチミン市のオフィス市場は、新規供給が増加しているにもかかわらず賃料が維持・上昇するメカニズムが働いており、「貸主優位市場」が継続しています。 その背景にあるのが、①根本的な供給不足と、②外資系(FDI)企業による旺盛な移転需要です。今回②に関して着目してお話をしますが、外資系PM会社のレポートによると、直近1年のオフィスの新規成約のうち実に82%をFDI企業が占め、移転企業の半数以上が「新しくて良いサービス」を求めてGrade A(最高級)ビルを選択しています。特に中国・台湾・韓国・シンガポールなどの企業は、オフィスを「採用競争力を高めるための経営投資」と捉え、戦略的かつ迅速に最高水準の環境を確保する動きを見せています。 一方で日系企業は、オフィスを「固定費」と捉えて既存ビルへの愛着や更新継続を好む傾向があり、他国籍企業のスピード感に取り残されかねない状況です。一部の築古物件ではライセンス更新ができず閉鎖に至るケース(Landmarkビルの事例など)も発生しており、安易な現状維持や築古物件への入居には慎重な判断が求められます。 2. テナントのジレンマ:更新時の「賃料10%値上げ」の衝撃 貸主優位の市場環境下において、既存テナントには更新のタイミングで「賃料10%値上げ」といった強気な要請が来るケースが多発しています。 「値上げを回避するためにコスト削減のために移転しよう」と考えるのが自然ですが、ここに大きな落とし穴があります。単純に「同じエリア・同じグレード」のまま別のビルへ引越しをした場合、内装費用、原状回復費用、引越代といった莫大な初期費用が重くのしかかり、トータルコストでメリットが出る(コストが逆転する)までに【10年以上先】になってしまうという過酷な現実があるのです。 3. ジレンマを打破する「3つのレバー」と最強コンボ この「更新か、移転か」というジレンマを打ち破るためには、移転戦略における「面積」「単価/グレード」「内装」という3つのレバーを操作する必要があります。 コスト削減を最優先とする場合、圧倒的に有効なのが以下の要素を組み合わせた「パターンF(最強コンボ)」です。 面積の最適化(縮小):一部在宅勤務などを絡め、本当に必要な面積へとオフィスを縮小させる。 単価/グレードの見直し:既存ビルよりも単価の安いグレードへ変更する。 内装付き物件の活用:新規でスケルトン状態から内装を手配するのではなく、床や壁などの内装が既に備わっている物件を選ぶ。 シミュレーションによれば、同等移転ではコスト回収に10年以上かかるのに対し、この「内装付・縮小・安価」を組み合わせた最強コンボを選択した場合、わずか【9ヶ月後】というスピードでコストメリット(Break-Even Point)を創出できます。移転のイニシャルコストを見落とさず、いかに内装費用や原状回復費用を抑えるかが早期のコスト逆転の鍵となります。 4. 企業がとるべきNEXTステップ 移転戦略を成功させるために、企業は以下の3つのステップを進めることが推奨されます。 1. スペースの最適化評価 (Agility Check):まずは従業員の働き方を見直し、本当に必要な面積(例えば25%削減の余地があるか等)を算出しましょう。無駄な動線がないか、キャビネットや倉庫スペース内の使い方も見直すと不要な面積が出てくるかもしれません。 2. サステナビリティ・品質要件の確認:単なるコスト削減だけでなく、採用や企業イメージに直結するESG対応などの要件を定義することが重要です。他のFDI企業が高級志向のビルを選択する中で、優秀な人材のつなぎとめ・新規採用にも、ビルのレベルが少なからず影響を及ぼすようになるはずです。 3. スピード重視の代替オプション探索:優良物件の動きが激しいため、内装付き物件や、コワーキングスペースやサテライトオフィスとしても使えるサービスオフィス(STARTSが運営する「COCORO」など)も含めて、早期に代替案を確保しましょう。 2027年までに契約更新を迎える企業様は、優良な選択肢が完全に埋まりきる前(12〜18か月前)からの早期情報収集を強くお勧めします。自社に最適なオフィス戦略を見直し、スマートなコスト削減を実現させましょう。 同様のオフィス内装施工事例やサービス詳細、無料相談はCRAFTECへ。 参考:ベトナム関連情報:JETRO
2026/07/15
オフィス関連
【連載コラム】視点を変えれば発見がある ベトナムに住んでいるといろんな謎に遭遇します。しかし背景を知ると「そうなのか!」と納得することが少なくありません。ベトナム在住日本人のそんな体験を紹介するミニストーリー。コーヒーを片手に気軽にお読みください。 第6回:頭痛の種は「チップ」 「チップって本当に面倒くさいなあ。どうしてこんな習慣があるんだろう」 加納さんはチップが悩みのタネだった。ベトナムは基本的に「チップなし」の国だと言われる。しかしチップを支払う場面は少なくない。 例えば週末のゴルフ。キャディさんにはチップが必要だと先輩駐在員から教えられた。ゴルフの後のフットマッサージもチップを払う。その後、カラオケ屋さんに行くと、そこでもチップ。タクシーは、以前は「少額のお釣りはチップとして渡す」という習慣があったそうだ。最近は、配車はアプリ、支払いはキャッシュレスになったので「これでチップから解放される」と思ったら、アプリにも「チップを支払う」という機能がある。 チップを敵対視していた加納さんが、その考えを改めたのは、意外なことに日本に一時帰国したときのことだった。1年ぶりに会った家族とファミリーレストランへ。そこで5歳の娘が、食べ物の入ったお皿を落としてしまったのだ。すぐに店員さんがやって来て、床に散らばった食べ物を片付けてくれた。 「迷惑をかけたな。チップを払おう」 加納さんは反射的にそう考えたのだが、ここは日本。「これはお礼です」と言って小銭を渡しても、おそらく受け取ってはくれないだろう。そもそもいくらぐらい渡せばいいのか。その後も帰国中にはチップについて考える機会が多々あった。 大学時代の友人達と飲みに行くと、とても素敵な笑顔で対応してくれる店員さんと、仏頂面の店員さんがいる。前者の店員さんには、感謝の気持ちと「これからもその笑顔を絶やさずに頑張ってね」という応援の気持ちを伝えたくて、チップを渡したくなった。 そもそもチップというのは、「感謝の気持ちを言葉だけでなく、形でも伝えたい」というところから始まったのではないか。居酒屋の店員さんに「気持ちの良い接客でした。ありがとう」と言うだけでも、相手は喜ぶだろう。でも……。 以来、加納さんはチップに対する考えが肯定的になった。「チップはベトナム人が小銭稼ぎをする口実」だと思っていたのだが、「ベトナム人は気持ちを形にする人達」だと認識が変わったのだ。 それにともない払い方も変わった。例えば飲み会の幹事を頼まれたとき。予約をしたレストランに少し早めに着いて、担当の店員さんに「今日はよろしくね」と事前にチップを渡すのだ。お店のサービスが良かったら終了後にもチップ。 こまめにチップを渡すようになって、加納さんは、ベトナムの人達との距離が近くなったような気がしている。 *文中に出てくる社名・人名はすべて仮名です。
2026/07/13
中安昭人の連載コラム
— Vol. 02 — 第2回:市場の流儀 ―ネギとパクチーの謎― 市場の流儀 ―ネギとパクチーの謎― Xin chào。街の拾いものを書き留める「サイゴン雑記」。 第2回は、ローカルの八百屋さんで買い物をすると、最後にポンっと袋へ入れてくれる"あの野菜"の話です。 ✦ ✦ ✦ 🎧 まずは、こちらの音を少し聴いてみてください。 #02 yaoya ※QRコードからもお聴きいただけます。 なんの音かわかりましたか? これは、いつもの八百屋屋さんでの会計風景です。 ガサゴソ。 品物をビニ袋に入れてくれる音。 「姉さん、8万ドンね〜」 そして間を置いて 「これいる? hành lá ハイン ラー、 ハイン ラー!」 そう、店主が差し出したのは、ネギでした。 30代くらいの夫婦が営む小さなお店は商店街の一角にあります。早朝6時には開店。 お昼には棚がスカスカになるほどの人気店です。 にこやかで感じのいい夫婦とのやりとりは、片言のベトナム語を実践練習できる場でもあります。 でもここまでくるには、ちょっと時間がかかりました。 というのも、ローカルの市場、最初の頃は怖さを感じたこともしばしば。 市場の女性は強気です。 数字が聞き取れない。 少量だけ欲しいと言いにくい。 「それだけ?」みたいな顔をされることがある。 市場のおばちゃんの勢いに負けて、余計なものまで買ってしまうこともある。 とにかく押しがつよい。 ということで、市場へ行くには気合を入れつつ出かけるも、今日もダメだった〜と打ちひしがれて帰宅することも度々ありました。 でも、そんな時期を経て辿り着いたいきつけで、毎回、日本との違いを感じる点があります。それは、品物を袋に入れてくれ、最後にやってくる。 ネギとパクチーコンビです。 頼んでいないのにネギあるいはパクチー。 いや両方セットで、 ポン! と袋へ入れてくれる。 最初はオマケ? お釣りがわり? 計量しているので値段の微調整かなと思いました。 ただ、しばらく通っているうちに、なんだかそうではなさそう・・・とモヤモヤしてきた。 "なぜベトナムの八百屋さんは、最後にネギとパクチーを渡すのだろう?" あれこれ考えていたら、日本でいうとアレのこと? が見えてきました。 アレ、それは"お刺身についてくる、ツマや大葉のこと" 刺身が入ったトレーを見て "やった〜、大葉サービスしてくれた〜" とは思わない。 美味しく見える、食べるための一部であって、刺身の盛り合わせにはなくてはならない存在。 つまり、ベトナム料理にとって、ネギやパクチーは単なる野菜ではないのでは? スープにも。炒め物にも。麺にも。 最後に少し散らすのがお決まり手順。 これにて、料理が完成! そんな合図みたいなもの。 量は少ないけれども、これがなければ整わない、そんな存在。 ということで、最後にくれるネギとパクチーの最強コンビ。 あれはオマケではない。お釣りでもない。 ベトナム料理にとって、ないと落ち着かない定番の見守り野菜。 「今日もごはん、おいしく作ってね〜」という店主からの挨拶がわりかな、と思っています。 ▲ この日はこれで8万VND=480円くらい。ネギは普段の倍! 多めにくれました。 🧺サイゴン暮らしメモ:ローカル「行きつけ店」を見つけるコツ ✓ 早朝スタート、午後には閉まりそうな店(鮮度良好な品物を扱うため人気) ✓ 少量買いを歓迎してくれる、欲しい分だけゲットできる店(半分や4分の1など快く切ってくれるサービス) ✓ 漬物や蒸し野菜などがあるお店は工夫上手 ✓ 店主との相性(異性を選ぶと、あたりが優しいことも…) ✓ ニコニコ現金払いが基本、細かいお金、持っていこう! — Next — 次回は——オーダーメイドか既製服か、ベトナムファッションの変化について。
2026/06/13
野本瑞穂のサイゴン雑記
【連載コラム】視点を変えれば発見がある ベトナムに住んでいるといろんな謎に遭遇します。しかし背景を知ると「そうなのか!」と納得することが少なくありません。ベトナム在住日本人のそんな体験を紹介するミニストーリー。コーヒーを片手に気軽にお読みください。 第5回:子守りをしてくれたカフェの店員さん 「今度一度ダナンに遊びに来ないか?」 単身赴任中の夫からLINEが届いた時、織江は気が進まなかった。夫をダナンに送り出して半年。いわゆるワンオペで子育てをしてきた。 「私1人ならいいわよ。でもウチの子、まだ2歳よ。慣れない外国で小さい子供の面倒をみるなんて大変」 でも夫は引き下がらず「一度はこっちの様子を見てもらいたいし」「オレも子守りをするからさぁ」など、何度か懇願されてついにダナンにやって来た。 しかし男性のこの手の約束は、悪意なく反故にされると相場が決まっている。到着の翌朝、夫は「ごめん。今日は有休を申請していたんだけど、どうしても出社しないといけない用件ができてしまって」と会社へ。織江は娘と2人きりで、夫のコンドミニアムに取り残されてしまったのである。 「お昼は近所のカフェに食べに行こうかしら」 織江は深いため息をつくと、夫が教えてくれたカフェに向かう。徒歩数分の距離とは言え、娘を抱っこしていたので、カフェに着いた時はひと汗かいてしまった。 ドアを開けると、エアコンの冷気と共に「外は暑かったでしょう」と若い女性店員が、きれいな英語で迎え入れてくれた。織江を席に案内すると彼女がこんな提案をしてきた。 「お母さん、小さい子供がいると気が抜けなくて大変ですよね。今日はリラックスした気持ちで食事を楽しんで頂きたいので、私達に娘さんのお世話をさせてもらえませんか?」 迷いはあったが、織江は娘をみてもらうことにした。 ソファ風の椅子に座った娘のところには、3人ほどいる女性店員が入れ替わり立ち替わりやってきて、話しかけてくれる。普段は人見知りをする娘が、言葉が通じないにも関わらずケタケタ笑っているのには驚かされた。 ランチセットはスープとサラダ、主菜にご飯がついたなかなか本格的な内容だった。何より子供に手をとられることなく、料理を味わいながら食べられるのが嬉しい。こんな解放感を味わうのはいつ以来だろう。 普段は「周囲に迷惑をかけてはいけない」という思いから、子連れでの外出は必要最小限にとどめていた。でもこうして人の好意に甘えてしまうのも「あり」なのかもしれない。 食後のコーヒーを味わいながら、織江は店員に抱っこされて笑っている娘の姿をスマホで写真に収め、夫のLINEに送った。 「ダナンっていいところかも。私も来ていいかな」 *文中に出てくる社名・人名はすべて仮名です。
2026/06/11
中安昭人の連載コラム
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