• TOP
  • Column
  • ベトナムオフィスの原状回復 基礎知識:費用・手続き・トラブル回避策

Column

ベトナムオフィスの原状回復 基礎知識:費用・手続き・トラブル回避策

2026/05/03

オフィス関連

ベトナム関連

ベトナムオフィスの原状回復 基礎知識:費用・手続き・トラブル回避策

ベトナムオフィスの原状回復の基礎知識
退去前に知っておくべき費用やトラブル回避策のすべて
 

「退去時に、想定外の工事費用をオーナーから請求された」「退去日までに原状回復が終わらずペナルティを支払う羽目になった」——ベトナムのオフィス退去時のトラブルは今も後を絶ちません。本記事では、ベトナムの原状回復について、費用・手続き・スケジュール・リスク回避策まで、実務に必要な情報をすべてまとめました。

1|原状回復(Hoàn trả mặt bằng)とは何か

原状回復とは、テナント(借主)が退去する際に、オフィスを「入居前の状態」または「契約で事前合意した状態」に戻す作業を指し、ベトナム語は「Hoàn trả mặt bằng(=物件を返却する)」といいます。

⚠️ 日本との大きな違い
日本では「経年劣化は貸主(オーナー)負担」という考えが明確になっています。しかしベトナムでは契約書による取り決めがすべてです。「原状回復の範囲」を事前に契約書で細かく取り決めておかなければ、退去時に思いもよらぬトラブルに直面します。

 

2|ベトナムの原状回復 5つのリスク

リスク① 契約書の原状回復条項が不明確

「原状に回復する」という一文だけでは不十分です。「スケルトン返却か現況返却か」「各設備(天井・床・間仕切り)の扱い」「追加で設置した照明や空調設備、移設したスプリンクラーや煙探知機の取り扱い、もともとあったブラインドの撤去の有無」など、具体的に記載されていないと、退去交渉が長期化します。

リスク② 入居時の現況記録がない

「このガラスとサッシのキズはもともと最初からあったものだ!」——そう主張しても、証拠がなければ交渉になりません。入居時に室内全体の写真や動画を高解像度で記録し、できれば、オーナーと借主の双方が署名した「現況確認書(Biên bản bàn giao mặt bằng)」を作成しておくのがベストです。

リスク③ 原状回復工事期間不足

スケルトン区画の返却が必要な場合、例えば200m²未満のオフィス区画は10日間ほど掛かります。返却期限までに工事完了しないと、契約不履行でペナルティが発生するので注意しましょう。

リスク④ 信頼できない業者への発注

安価な業者に依頼した結果、仕上がりがオーナーの基準を満たさず、やり直しを命じられるケースがあります。原状回復工事は「安さ」だけでなく、ビル側とコミュニケーションが取れ、スケジュール管理ができる業者を選びましょう。

リスク⑤ 保証金返還のトラブル

ベトナムでは賃貸契約時の保証金(デポジット)は月賃料の3ヵ月分を預けるケースが一般的です。原状回復が完了しても、オーナーに「傷がある」「基準を満たしていない」などと主張され、保証金が満額返金されないトラブルが頻繁に起きています。話が後で覆らないよう、原状回復後の区画返却立ち会いのやり取りを書面で残しておくなど、防衛策を施しましょう。

 

3|費用の目安

原状回復工事費用はオフィスの広さや回復条件によって大きく異なってきます。以下はホーチミン都心部のオフィスビルの過去2年間の原状回復工事実績に基づく目安です。

グレード 概要 ㎡単価目安
ハイコスト   Aグレードのビルに多く、大規模区画でスケルトン原状回復要件が最も厳しい区画。ビル基幹システムの専門的な設備工事の回復も含まれ、床天井の広範囲な組み直しまで求められる場合。 USD 80〜130+ /㎡  
ミドルコスト   造作物の撤去や表面的な修繕工事がメイン。部分的な天井設備の回復は求められる。 USD 30〜80 /㎡  
ローコスト   一部の天井設備や造作物の残置が許可され、壁床の限定的な修繕工事のみ。 USD 10〜30 /㎡  

原状回復工事の主な費用項目

No. 工事項目 英語名 主な内容
1 解体工事 Demolition works 既存壁・天井・床・ブラインド・ロゴなどの撤去費
2 内装工事 Interior Construction /
Reinstatement works
内装の復旧に関わる工事で、壁の修繕や再塗装(Wall painting)。床の不陸調整やモルタル均し作業(Touch-up floor / Mortar floor)
3 電気設備工事 Electrical & ELV system 追加照明器具・ネットワーク配線・コンセント撤去、元の照明配線への復旧費
4 空調換気設備工事 Mechanical / HVAC system 吹き出し口・吸い込み口の移設、ダクトやリモコンの元位置への復旧費
5 消防設備工事 Fire fighting system
(PCCC)
スプリンクラー・煙感知器の移設・撤去。ビル側システムとの再接続設定費
6 管理諸経費 Preliminary works /
Other works
エレベーター・共有部の養生費(Protection fee)、共用部や区画内の清掃費(Cleaning fee)、廃材搬出処分および車両費(Debris disposal)、監督の現場管理費(Supervision / Site management fee)

 

4|退去6ヶ月前の検討開始が一般的

原状回復で最も多い失敗は引っ越し日程の判断ミスによる全体工期不足です。オフィスの引っ越しは<原状回復工事>前に行う必要がありますので、現オフィス返却期限から原状回復工事期間を逆算し、引っ越し日を割り出します。そこから新オフィス工事の期間、ビルへの工事申請期間、オフィス詳細打合せ期間、物件選定期間・・・などと遡って全体スケジュールを把握します。200m²未満のオフィスの場合には6ヶ月前からの検討開始を推奨します。300m²以上のオフィスはさらに前からの検討が必要となります。

 


📅 退去スケジュール早見表(6ヵ月前からの逆算)
フェーズ タイミング 主な作業
①事前準備 退去6ヵ月前 契約書の原状回復条項の確認。オフィス移転のマスタースケジュール検討。
②概算予算組み 退去4〜5ヵ月前 業者から概算見積もりの取得。再利用家具のめぼし
③工事着工 退去2ヵ月前 新オフィス内装工事に着手、引っ越しと原状回復工事の詳細打合せ
④退去 退去3週間前 引っ越しと原状回復工事の日程FIX。再利用什器の確定
⑤原状回復完了 退去当日〜2週間後 鍵の返却。保証金の変換手続き。

 

⏰ 重要:退去通知期限(Notice期間)は契約書に明記されています(一般的には3ヵ月前通知)。退去の通知期限を過ぎてからのビルへのアナウンスは、ペネルティの対象(デポジット没収)となるケースが多いので気をつけましょう。

 

5|原状回復で失敗しないためのポイント

① スケジュールがタイトな場合はオフィス内装工事業者へ一括依頼

新オフィスの内装工事、引っ越し、原状回復工事をそれぞれ別業者へ発注するケースがありますが、ベトナムでは特にトラブルの原因となります。内装工事と引っ越しでは、再利用家具や再利用機器の詳細と搬入タイミングで新オフィスの内装工事側との連携が必要です。また、引っ越しと原状回復工事でも、残置物の確認や工事の着手タイミングなど連携が必要です。それらを別々に分離発注すると、情報連携不足でトラブルが発生してしまうことが多いのがベトナムです。現オフィスの返却期限までスケジュールに余裕がない場合には、ワンストップで内装業者へ依頼することを推奨します。

② インボイスが発行できないケースがあるので注意

ビルによっては、ビルの管理エンジニア達自身で原状回復工事を安く行うことを打診してくるケースがあります。そうした場合、インボイスを発行してもらえないことが多いため、事前に確認いたしましょう。

③ 契約書や引き渡し時の書類の確認

現オフィスの過去当時の入居時には双方の立ち会いによって、照明器具・スプリンクラー・煙探知機・空調吹き出し口の天井の設備機器の数をビルエンジニアと数え確認した書類が存在します。また、現オフィスの内装工事を着手する前の設備機器の回復工事の内容は工事業者からビルへ確認してもらいます。

 

6|よくあるトラブルQ&A

Q. 居抜きで借りたオフィスには特に注意。退去時、オーナーが「スケルトン返却」を要求。契約書には詳細が書かれていないケース。

A. 契約書に明記されていない場合、テナントに厳密には法的義務はありませんが、一般的には貸主の強いマーケットであるため、保証金の返還でトラブルになるケースがあります。有利に進めるためには、仲介業者を通じて原状回復条件の緩和交渉を推奨します。こうしたトラブルとならないよう、引っ越し先の物件賃貸契約時には「区画返却条件」を予め書面で明確に定め契約を取り交わすようにしてください。

Q. 保証金が返ってこない場合、どう対処すればよいか。

A. まず契約書の保証金返還条項を確認し、オーナーへ書面請求します。それでも応じない場合は、裁判所への提訴または調停機関への申し立てが可能です。弁護士費用との費用対効果を考慮した上での判断となります。

Q. 工事中に追加費用を請求されたら場合はどうすればよい?

A. 追加工事費用は、1)解体後に発覚した新たな予期せぬ状況による追加工事、2)ビル側の指導によって新たに発生する費用、3)工事業者の見積もり抜けの主に3つがあります。3)については支払いを拒否することはできますが、ローカル業者の場合には支払うまで工事を中断する業者もあり、注意が必要です。1)と2)のケースでは着手前には想定できないコストのため、一般的に協議の上で依頼主が負担します。

 

7|退去前チェックリスト

契約書記載の原状回復条件と返却期限の確認
入居当時の区画の引き渡し書類(サイン入)をチェック
業者見積の取得
退去期限前(通常3ヶ月前)にオーナーへ退去通知
引っ越し日や再利用家具の詳細決定
原状回復工事の進捗チェック
原状工事完了立ち会い検査記録の保管
保証金の返還条件、手順、返還スケジュールの確認

 

CRAFTECによる原状回復サポート
CRAFTECは日系企業のベトナムオフィスづくり、引っ越し、原状回復までワンストップでサービス提供をしています。お気軽にご相談ください。

📩 お問い合わせ:https://craftec.vn/contact/

吉越 誠一郎

執筆者

吉越 誠一郎

会社名
CRAFTEC VIETNAM CO., LTD.
業種
オフィスの内装工事やコンサルティング、PM業務、コンセプトデザイン、ITやセキュリティソリューション等、オフィス構築に関わる業務全般に従事。
自己紹介
CRAFTEC VIETNAM代表。早稲田大学在学中からバーテンダー修行。バー経営で反響営業の本質を学び、その後10年間住宅建築の営業職に従事。2017年ベトナム移住。フロンティアコンサルティング・ホーチミン支店長を経て、2025年 CRAFTEC VIETNAM設立。現在までベトナムで日系企業200社以上のオフィス構築を担当。

お問合せ