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視点を変えれば発見がある 第5回:子守りをしてくれたカフェの店員さん

2026/06/11

中安昭人の連載コラム

視点を変えれば発見がある 第5回:子守りをしてくれたカフェの店員さん

【連載コラム】視点を変えれば発見がある

第5回:子守りをしてくれたカフェの店員さん

「今度一度ダナンに遊びに来ないか?」
単身赴任中の夫からLINEが届いた時、織江は気が進まなかった。夫をダナンに送り出して半年。いわゆるワンオペで子育てをしてきた。

「私1人ならいいわよ。でもウチの子、まだ2歳よ。慣れない外国で小さい子供の面倒をみるなんて大変」
でも夫は引き下がらず「一度はこっちの様子を見てもらいたいし」「オレも子守りをするからさぁ」など、何度か懇願されてついにダナンにやって来た。

しかし男性のこの手の約束は、悪意なく反故にされると相場が決まっている。到着の翌朝、夫は「ごめん。今日は有休を申請していたんだけど、どうしても出社しないといけない用件ができてしまって」と会社へ。織江は娘と2人きりで、夫のコンドミニアムに取り残されてしまったのである。

「お昼は近所のカフェに食べに行こうかしら」
織江は深いため息をつくと、夫が教えてくれたカフェに向かう。徒歩数分の距離とは言え、娘を抱っこしていたので、カフェに着いた時はひと汗かいてしまった。

ドアを開けると、エアコンの冷気と共に「外は暑かったでしょう」と若い女性店員が、きれいな英語で迎え入れてくれた。織江を席に案内すると彼女がこんな提案をしてきた。

「お母さん、小さい子供がいると気が抜けなくて大変ですよね。今日はリラックスした気持ちで食事を楽しんで頂きたいので、私達に娘さんのお世話をさせてもらえませんか?」
迷いはあったが、織江は娘をみてもらうことにした。

ソファ風の椅子に座った娘のところには、3人ほどいる女性店員が入れ替わり立ち替わりやってきて、話しかけてくれる。普段は人見知りをする娘が、言葉が通じないにも関わらずケタケタ笑っているのには驚かされた。

ランチセットはスープとサラダ、主菜にご飯がついたなかなか本格的な内容だった。何より子供に手をとられることなく、料理を味わいながら食べられるのが嬉しい。こんな解放感を味わうのはいつ以来だろう。

普段は「周囲に迷惑をかけてはいけない」という思いから、子連れでの外出は必要最小限にとどめていた。でもこうして人の好意に甘えてしまうのも「あり」なのかもしれない。

食後のコーヒーを味わいながら、織江は店員に抱っこされて笑っている娘の姿をスマホで写真に収め、夫のLINEに送った。
「ダナンっていいところかも。私も来ていいかな」

*文中に出てくる社名・人名はすべて仮名です。

中安 昭人(なかやす・あきひと)

執筆者

中安 昭人(なかやす・あきひと)

自己紹介
「ベトナムの伝道師」を目指している編集者・ライター。ベトナムを初めて訪れたのは1995年。趣味は路地裏のカフェ巡り。

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