Column
サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第4 回:ベトナム語が読めなくても、料理本ならいけるかも?!
2026/08/09
野本瑞穂のサイゴン雑記

– Vol. 04 –
第4 回:ベトナム語が読めなくても、料理本ならいけるかも?!
ベトナム語が読めなくても、料理本ならいけるかも?!
Xin chào。(シン・チャオ)。 コラム担当、ライターの野本瑞穂です。
今回は、ふらりと入った本屋さんで見つけた一冊の料理本から、目から鱗の体験をご紹介します。
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控えめなデザインのベトナム料理本を手に取って
▲ 控えめな装丁のベトナム家庭料理本
いつまでたってもベトナム語はわからない。でも料理本なら写真もあるし何とかなるんじゃない?
そんな軽い気持ちで手に取った料理本 『Cơm chay nhà mình có gì?』
ベトナムの家庭のベジタリアン料理本で149,000ドン(約900円)。
150ページ、オールカラー。
今どきのおしゃれな料理本ではありません。写真には少しざらつきがあって、日本でいうと少し昔の料理雑誌のようでちょっぴりレトロ。盛り付けも飾りすぎず、シンプルなコーディネート、
でも、それがいいんです。「これなら私にも作れそう」そんな安心感があります。
ベトナムの人気、料理研究家は?!
著者の料理研究家Dzoãn Vân(ゾアン・ヴァン)さん。Google翻訳でプロフィールを読むと、元教師で文学を教えながら、台所では料理を教えてきた人物。テレビや新聞でも長年活躍する、ベトナムでは有名な料理研究家のようです。
「台所は家の中で一番大切な場所」という、この言葉に購入を決めました。
考える時はいつも台所って思っている私は、首を縦に深く深〜く頷いたわけです。
さらに「家庭の食卓とは何か」というエッセイから始まっています。
翻訳アプリによると、昔、ベジタリアン料理は旧暦の元日、満月の日に寺で食べるものだったそうです。でも今は家庭でも、野菜や果物、豆腐などをベースにもっと自由に、もっと美味しく食べられます。家族のために毎日食べられるシンプルながらも風味豊かな手作りベジタリアン料理を作ろう。そんなメッセージが書かれていました。
そう、ベトナムの大衆食堂には、肉や野菜を使わないベジタリアン食堂もたくさんある。おいしいので体調整えたい時には、よく通っている。「家でも作れたらいいな」。そんな1冊としてピッタリでした。
Chuối sáp kho tiêu ペッパー風味の煮込みバナナ
▲ 料理本に載っていた完成写真
バナナをおかずにする料理、その味は?
バナナを生コショウで煮て味を整えるだけ!
簡単そう! 待てよ、どんな味だろ? アジアならではの料理っぽい〜と、ワクワクしてきて、さっそく作ってみようとなりました。
▲ 市場でバナナを買う様子
市場で料理本を手に食材を求めます。
おばちゃんたちが、寄ってたかってなんか言ってくれて(サップサップと言ってたと後でわかりましたが・・・ここでは苦笑いするだけ)、かたい小さなバナナを買いました。
さぁ材料は揃いました。
サップバナナ、生コショウ、水、ベジタリアン醤油、砂糖、うま味調味料、黒胡椒、油。
作り方は全部で6工程。料理本なので、文章はシンプル。
ただ、ベトナム語との格闘が立ちはだかりまして、わからないことだらけ。翻訳アプリではうまく訳せない部分もあるのですが、ベトナム文化との違いにもぶつかります。
問題はChuối sáp。茹でたバナナ? いや サップという品種のバナナ? 市場でおばちゃんたちは、これこれと指さし、渡してくれたので、料理用バナナはゲットできてる。これを、茹でるってことかな? と勝手に解釈しました。ただ問題は、レシピに茹で方が書いていない。「何分?」「皮付き?」「水から?お湯から茹でるの?」完全に混乱です。
でもこれが面白いんですね。日本の料理本がいかに親切か、よくわかりました。少ないコメントながら適切な言葉選び、表現。それこそ昔は、江戸時代の料理本も、今読むと、決して親切ではありません。現代の料理本には進化を感じます。つまり料理本の作り方には、日本とは違う文化や歴史があるのかもしれません。動画で見ればいいじゃん、と思うかもしれませんが、本から想像しながら、限られた情報で作る料理の中に楽しみもあるのです。
とりあえず、型崩れしないよう15分ほどで取り出してみた。皮を剥いたバナナはねっとり、ギュゥっとした食感。食べたら程よい酸味で美味しい。里芋とさつまいも、じゃがいもの間のような、不思議な食感。
これを調味料といっしょに、コトコト弱火で煮ていきます。
レシピにあった「riu riu」というのが「コトコト」=そよ風? のように、弱火で静かにという意味らしい擬態語ですね。口に出して言いたくなるベトナユ語、すごくかわいい。
さてお味は?
茶色く煮詰まったバナナは、みるからにバナナです。
ベトナムのベジタリアン醤油で甘辛く煮詰めたら、最後に油と胡椒をささっと回して仕上げます。
これはきっと、芋の煮っ転がしだな? と想像しながら味見したら、むにゅう〜と歯触りがあって、
甘辛さとともに酸味と胡椒の風味が、どさっと口の中に。噛むほどに、なんだろうこれ?の疑問が湧く。
そして後から、バナナの筋の苦味が舌をじゅわりぃぃぃ〜と痺れさせる。
ひいき目に見ても、おいしぃ・・・とは言えず、静かに箸を置く。
夜ご飯に食卓に何気なく置いてみたけれど、夫は「何これ〜!」と楽しそうに口へ放り込んだけど
「これはいいや」と言って、二口目はありませんでした。
ただこれはレシピが悪いのではなく、原因は私の理解不足にあることがわかりました。
というのも、その後、丁寧に調べていったら、Chuối sáp は、市場の蒸し器で蒸されて売られているバナナのことだったんです。
Chuối sápの正体
▲ 市場で売られているサップバナナ
そう、ベトナム人にとっては当たり前の蒸しバナナを勘違いして料理していた私。日本語で言うと、さつまいもではなく、蒸かし芋、というものが原材料に入っていたということ。市場で、しきりにおばちゃんたちが、あれこれ説明してくれていたのですね。
ベトナム語の壁を感じてはいますが、料理本から馴染んでいくのも楽しいもの。
Chuối sáp、この単語だけは、もう忘れそうにありません。
▲ 皮を剥いたサップバナナ
ただ日本のレシピのように、気を付けるポイントとしてただひとつ、
バナナの筋はしっかり取る、と書いて欲しかった。
さて次はどのページを試してみましょうか。楽しみが増えました。
✏ 口に出して言いたい ベトナム語 〜料理編〜
| 日本語 | ベトナム語 | 読み方(カタカナ) |
|---|---|---|
| ベジタリアンご飯 | cơm chay | コム チャーイ |
| ベジタリアン魚醤 | nước mắm chay | ヌゥオック マム チャーイ |
| 弱火 | lửa nhỏ | ル〜ア ニョ〜ォ |
| コトコト | riu riu | ズィウ ズィウ |
| 煮る | Kho | コー |
– Next –
次回は——手先の器用な国だから?! ミニチュオ・プラモデルの世界。

執筆者
野本瑞穂(NOMOTO MIZUHO)
- 自己紹介
- 2021年よりホーチミン在住。 日本では20年以上、テレビの構成作家、ラジオディレクターとして番組制作に携わる。直近ではNHKラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」「伊集院光の百年ラヂオ」を担当。これまでに200人を超える作家、音楽家、芸人、研究者らへのインタビューやドキュメンタリー制作を通じ、人々の声に耳を傾け、その人らしい言葉を紡ぎ届けてきた。現在はベトナム・ホーチミンで暮らしながら人々の営みや街の空気を観察する日々を満喫。
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