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野本瑞穂のサイゴン雑記

サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第6回 バインミーの街は いつからこんなにクロワッサンだらけになったのよ?(前半)

– Vol. 06 – 第6回:バインミーの街は、いつからこんなにクロワッサンだらけになったのよ?(前半) バインミーの街は、いつからこんなにクロワッサンだらけになったのよ?(前半) Xin chào。(シン・チャオ)。 コラム担当、ライターの野本瑞穂です。 最近、ホーチミンのカフェで、やたらとクロワッサンを見かけます。 + + パン屋さんではありません、カフェです。コーヒーを飲もうと入った店のショーケースに、ごく普通の顔をしてクロワッサンが並んでいます。しかもプレーンだけではなく、クリームを挟んだもの、果物をのせたもの、チーズやチョコレートを合わせたものも。やたらと大きなものもあります。 値段は50,000VND、60,000VND、高いものでは80,000VNDほど。 日本と比べても、それほど安いわけではありません。味も大きさもいろいろ。 ひと口かじった瞬間にバターの香りが広がるものもあれば、「あれ、バターはどこへ行った?」「パッサパサだよ〜」というものもある。「ずいぶん、強気な値段だわね」、と感じつつ食べる。 とにかく、たいていの店舗カフェにはあるのでは? と思うほどメニューに載っていて、とにかく増えたな〜という印象です。 ▲ カフェの多様なクロワッサン 私がベトナムで本格的に暮らし始めたのは、2020年のコロナ禍以降。 それ以前の街のパン事情を肌感覚で知っているわけではないけど、暮らし始めた頃、こんなにあちこちの カフェでクロワッサンを見た記憶はありません。 気になって、パンについて少し調べてみました。ベトナムのパンといえば、やっぱりバインミー。 街を歩けば、小さな屋台や店先のガラスケースには、パテ、ハム、豚肉、なます、キュウリ、香草とともに バゲットがぎゅうぎゅうに詰まって並んでいます。フランス統治時代に持ち込まれたバゲットを、ベトナムの人たちはすっかり自分たちの食べ物にしました。 ならば、クロワッサンも同じではないか。きっとフランスの影響を受けたよね、クロワッサンも?! 最初はそう思っていたのですが、そんな簡単な話ではない。フランスだけを見ていても答えは出てきませんでした。 ▲ フランスの影響からバインミー、クロワッサンも? “クロワッサン”、アジアではかなり自由な食べ物に変貌していたみたい・・・ たとえば2016年。ベトナムのパン屋さん シンガポール発のベーカリーチェーン・Bread Talkでは、「Golden Lava Croissant」というクロワッサンが発売されていました。中に入っていたのは塩卵黄のクリーム。ベトナムの中秋月に盛り上がる、月餅の中に入ってるやつ。当時、香港やシンガポールなどで人気になっていた味で、ベトナムでも試験販売されたようで、焼き上がりを待つ客が並んだという。すでにこのようなクロワッサンが人気になっていました。 クロワッサンブームは、ベトナムだけではなく、2017年ごろには、中国でチョコレートとココアをたっぷりまとわせた「Dirty Bread」(チョコまみれに汚れるという意味らしい)が流行。その後、韓国ではクロワッサン生地をワッフルメーカーで焼く「croffle」も登場。 塩卵黄を入れる。チョコまみれにする。ワッフルにする。 つまり、2010年代後半には、クロワッサンはアジアの街から街へ移動しながら、 それぞれの土地で好きなように姿を変えていたようです。 私がごく最近のことだと思っていたベトナムのクロワッサン人気は、意外と長い助走期間があったようです。 そういえば、日本ではどうだった? ここまで調べていて、ふと日本のことを思い出しました。 日本でも、1960年代にフランス人パン職人のフィリップ・ビゴが来日し、ドンクなどを通じて本格的なフランスパンを広めていきます。1970年代にはフランスパンがちょっとしたブームになり、雑誌『クロワッサン』が創刊されたのも1977年。 以前、いま84歳になる女性から、当時の東京の話を聞いたことがあります。表参道あたりで、ドンクのパン袋を抱え、フランスパンやクロワッサンをかじる。それが若い人たちには、とてもおしゃれだったのだそうです。パンを食べることまで、ファッションだった時代です。 とはいえ、私の実感として、クロワッサンがもっと日常的な存在になったのは、さらに後だったような気がします。思い出すのは、サンマルクカフェの「チョコクロ」です。1号店ができたのは1999年。そう2000年前後から、カフェに入ってコーヒーと一緒に焼きたてのチョコクロを食べる、という風景が身近になったのです。 その少し前から、日本では冷凍パン生地やオーブンなどの技術も進んでいました。 専門のパン屋で職人さんが一から仕込まなくても、店で焼きたてのパンを出せる環境が広がっていったのです。 つまり・・・クロワッサンを「知っている」ことと、 街のあちこちで「気軽に食べられる」ことは、別の話ってことですね。 考えてみれば、私が今のホーチミンで感じている、モヤモヤ・・・クロワッサンはいつから、普通のカフェでも気軽に出せるパンになったのか。カフェにいつもある、クロワッサンってなんなんだ? ということ。 ここあたりをしつこく調べてみたら、ベトナムで2019年に行われた国際的な展示会に行き着きました。 「Vietnam International Bakery Show(VIBS)」という国際的な製パン専門展示会が2019年、ホーチミンのSECCで初めて開かれた。 公式の報告書によると台湾、ベトナム、中国、日本、韓国、マレーシア、シンガポールなど7つの国と地域から70社、122ブース。4日間で4,945人が訪れた。 ただ写真を眺めていてクロワッサンがずらりと並んでいるわけではなく、写っているのは、街のベーカリーで見かけそうな惣菜パンや菓子類。 そもそもこの展示会の主役は完成したパンそのものでもなく、オーブンやミキサーなどの製パン機械。 原材料。包装。そして、パンを作るためのノウハウだったのです。 公式報告書にも「products, raw material, equipment, packing to baking knowhow」とあります。 興味深かったのが、来場者が探していたもので一番多かったのが原材料で29%。 次が製パン設備で21%。完成したパンを見に来るというより、「これから何を使って、どうパンを作るか」を探しに来た人たちが多かったようです。 ▲ 第1回VIBS ベトナム人が知りたかったもの しかも、この第1回VIBSを仕掛けた主催者のひとつが、台北ベーカリー協会と台湾の展示会会社。 フランスではありませんでした。そして集まったのは、アジア各国の業務用オーブンやミキサーの業者たち。 バインミーの隣で、何かが始まっていた。 2019年の時点では、クロワッサンという一つの商品よりも、もっといろいろなパンを作るための材料、機械、技術そのものがベトナムに集まり始めていた、ということのようです。 バインミーは、すでに街の日常にしっかり根を張っていた。その隣で、もうひとつのパン文化が育つための環境も、少しずつ整い始めていた時期だったのかもしれない。 そしてコロナを挟んだ数年後。私の目の前には、多くのカフェでクロワッサンが並んでいます。 では、この間に何があったのだろう。 誰が焼き始めたのか。どこで技術を覚えたのか。 そして、なぜパン屋だけではなく、カフェにもこれほど広がったのか。 ▲ こちらは、やたらと大きなパン・オ・ショコラ。チョコもたっぷり。最近のサイゴンのクロワッサン系は、なかなか自由です。 ✏ 口に出して言いたい ベトナム語 〜パン編〜 日本語 ベトナム語 読み方(カタカナ) パン(バインミー) Bánh mì バイン ミー クロワッサン(牛の角のパン) Bánh sừng bò バイン スン ボー ラバ・クロワッサン(塩卵黄クリーム入り) Sừng bò kim sa スン ボー キム サー 月餅 Bánh trung thu バイン チュン トゥー – Next – 次は「作る人」の側から、もう少し追いかけてみます。

2026/10/05

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サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第5 回:手のひらに収まるベトナム。ミニチュアの世界

– Vol. 05 – 第5 回:手のひらに収まるベトナム。ミニチュアの世界 手のひらに収まるベトナム。ミニチュアの世界 Xin chào。(シン・チャオ)。 コラム担当、ライターの野本瑞穂です。 今回は、ふらりと入った雑貨さんで見つけたミニチュア玩具から見えてきた、あれこれについて、ご紹介します。 + + ▲ 雑貨店で見つけた、組み立て玩具 出会いは、かれこれ3年ほど前。雑貨屋さんにディスプレイされていた小さな自転車。 行商のおじさん、おばさんが引っ張る自転車の荷台には、売り物の綿飴やお花、金魚など。 よく見ると、ホーチミンの街で日々目にしている風景が、そのまま手のひらサイズになっていたのです。 「かわいい!」 これ欲しい。でも値段を見ると、一つ30万ベトナムドン(1800円くらい〜2026年9月付)ほど。 ひとつ買ったら、きっと並べたくなる。並べたら、また次が欲しくなる。 雑貨好きには危険な予感しかしない。その日は、いったん手を止めました。 ところがしばらくして、インターネットで同じようなミニチュアを発見してしまい・・・。 しかも「あれ? こっちは安い」 よく見ると、完成品ではなく、自分で作る組み立てキットでした。 「面白そう! 楽しそう!」というわけで、さっそくいくつか、取り寄せてみました。 ▲ 取り寄せた、組み立て玩具 届いたのは「HÀNG RONG(ハンロン)」シリーズの、お肉の焼き肉を使ったバインミー屋台。(豚の焼き肉、ローストポークの屋台ですが中には鶏肉も、この看板との不一致さもベトナムらしいです) 他にも、ベトナムの街で見かける行商や屋台を再現したもので、廃品回収屋さん、ジュース屋さん、 自転車に商品を積んだ行商……。いろいろな種類がありました。 箱には「Trở Về Tuổi Thơ」とあって「子ども時代に帰る」といった意味。 いいじゃないですか〜と、そっと箱を開ける……。 木の板。小さな部品。針金。紙。布。そして、かなり細かい説明書。 豚の丸焼きなんて、指先ほどの大きさ。 屋台の骨組みを作り、色を塗り、看板を貼り、針金を曲げ……。 これは、なかなか手強い。 ひとまず説明書を広げ、部品を眺め、「なるほど」と納得し、そっと、また箱に戻しました。 ▲ 組み立て玩具のキット内容 そして少し忘れかけていたのに・・・最近、書店に行ったらまた出会ってしまった。 雑貨コーナーに大きく紹介されていたのです。 思わず見入って、懲りずに、別の種類も購入。 なぜなら、ミニチュアになっているのが有名な観光名所ばかりではなく、 新聞スタンド、米屋、床屋、フーティウの屋台、バイク修理店、行商……。 いつもみているベトナムの風景が、小さくなっているかわいさに心を持って行かれてしまいました。 これは、ベトナム文化が手のひらに収まるアイテム! 日本にも、小さなものを愛でる文化は昔からある。 『枕草子』には「なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし」とあり、江戸時代には精巧な雛道具。 現代ならプラモデル、食玩、カプセルトイ。 小さなものに惹かれる気持ち。日本人にはなんだかわかる気がします。 日本とベトナム。小さなものを作り、細部まで凝り、それを眺めて楽しむ。 こういうところ、どこか似ているのかもしれません。 ただ、ベトナムで小さくなったのは、屋台であり、行商の自転車であり、街角の食堂。 今日も外へ出れば、その「本物」が街を走っています。 それにしても、こんなものを作ったのはどんな人なんだろう。 小さな世界を作った人 ▲ 組み立て玩具 立ち上げのグエンさん ちょっと調べてみたら「Thế Giới Tí Hon(小さな世界)」を立ち上げた Nguyễn Phúc Đứcさんという人にたどり着いた。 1989年生まれ。建築や美術を専門に学んだわけではなく、DJやマーケティング、配達などさまざまな仕事を経験したという。子どもの頃、父親からもらった木製の小さな家の模型を思い出したことが、この仕事を始めるきっかけのひとつ、だという。 しかも、面白いのは、最初に作ったのがサイゴンではなく、寿司店など日本をテーマにしたミニチュア。 でも、それはなかなか売れなかった。 本人は後のインタビューで、みんな「好き」とは言ってくれるけれど買ってくれなかった、 それは模型に人を動かす「感情」がなかったからではないか、と振り返っていました。 そこで、彼が思い出したのが、自分が育ったサイゴン。 子どもの頃に通った路地の雑貨店を作ってみたところ、今度は大きな反響に。 そこから彼の記憶にあるサイゴンの街を次々と小さく再現していった。 彼が掲げているのは、「ベトナム人に、もっとベトナム文化を愛してもらう」という思い、でした。 なるほど。私が最初に「かわいい!」と足を止めたのも、単に小さいからではなく、そこにいつも見るベトナムの風景、文化を感じ取ったのかもしれません。 だから、このミニチュアには妙に惹かれるのでしょう。 ▲ 飾られた組み立て玩具 今では、完成品もあちこちの場所(雑貨店、書店、ホテルのお土産売り場など)で購入することができます。 日本へのお土産にしたこともあり、喜ばれました。「プラモデル作るのが、好きそう〜」と思う人には、迷わず組み立てキットをお土産に渡したら、とても喜ばれ、本当にきれいに完成させた人もいました。 一方、我が家では――。 箱を開けただけのものが、まだある。 ベトナム文化が手のひらサイズになって、まだ箱の中で出番を待っている。 ……そろそろ、作らなくては。 ✏ 口に出して言いたい ベトナム語 〜雑貨編〜 日本語 ベトナム語 読み方(カタカナ) 小さな世界 Thế Giới Tí Hon テー ゾーイ ティー ホン 子ども時代に帰る Trở Về Tuổi Thơ チョー ヴェー トゥオイ トー 行商 Hàng rong ハン ゾン こんにちは Xin chào シン チャオ – Next – 次回もお楽しみに。

2026/09/17

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サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第4 回:ベトナム語が読めなくても、料理本ならいけるかも?!

– Vol. 04 – 第4 回:ベトナム語が読めなくても、料理本ならいけるかも?! ベトナム語が読めなくても、料理本ならいけるかも?! Xin chào。(シン・チャオ)。 コラム担当、ライターの野本瑞穂です。 今回は、ふらりと入った本屋さんで見つけた一冊の料理本から、目から鱗の体験をご紹介します。 + + 控えめなデザインのベトナム料理本を手に取って ▲ 控えめな装丁のベトナム家庭料理本 いつまでたってもベトナム語はわからない。でも料理本なら写真もあるし何とかなるんじゃない? そんな軽い気持ちで手に取った料理本 『Cơm chay nhà mình có gì?』  ベトナムの家庭のベジタリアン料理本で149,000ドン(約900円)。 150ページ、オールカラー。 今どきのおしゃれな料理本ではありません。写真には少しざらつきがあって、日本でいうと少し昔の料理雑誌のようでちょっぴりレトロ。盛り付けも飾りすぎず、シンプルなコーディネート、 でも、それがいいんです。「これなら私にも作れそう」そんな安心感があります。 ベトナムの人気、料理研究家は?! 著者の料理研究家Dzoãn Vân(ゾアン・ヴァン)さん。Google翻訳でプロフィールを読むと、元教師で文学を教えながら、台所では料理を教えてきた人物。テレビや新聞でも長年活躍する、ベトナムでは有名な料理研究家のようです。 「台所は家の中で一番大切な場所」という、この言葉に購入を決めました。 考える時はいつも台所って思っている私は、首を縦に深く深〜く頷いたわけです。 さらに「家庭の食卓とは何か」というエッセイから始まっています。 翻訳アプリによると、昔、ベジタリアン料理は旧暦の元日、満月の日に寺で食べるものだったそうです。でも今は家庭でも、野菜や果物、豆腐などをベースにもっと自由に、もっと美味しく食べられます。家族のために毎日食べられるシンプルながらも風味豊かな手作りベジタリアン料理を作ろう。そんなメッセージが書かれていました。 そう、ベトナムの大衆食堂には、肉や野菜を使わないベジタリアン食堂もたくさんある。おいしいので体調整えたい時には、よく通っている。「家でも作れたらいいな」。そんな1冊としてピッタリでした。 Chuối sáp kho tiêu ペッパー風味の煮込みバナナ ▲ 料理本に載っていた完成写真 バナナをおかずにする料理、その味は? バナナを生コショウで煮て味を整えるだけ! 簡単そう! 待てよ、どんな味だろ? アジアならではの料理っぽい〜と、ワクワクしてきて、さっそく作ってみようとなりました。 ▲ 市場でバナナを買う様子 市場で料理本を手に食材を求めます。 おばちゃんたちが、寄ってたかってなんか言ってくれて(サップサップと言ってたと後でわかりましたが・・・ここでは苦笑いするだけ)、かたい小さなバナナを買いました。 さぁ材料は揃いました。 サップバナナ、生コショウ、水、ベジタリアン醤油、砂糖、うま味調味料、黒胡椒、油。 作り方は全部で6工程。料理本なので、文章はシンプル。 ただ、ベトナム語との格闘が立ちはだかりまして、わからないことだらけ。翻訳アプリではうまく訳せない部分もあるのですが、ベトナム文化との違いにもぶつかります。 問題はChuối sáp。茹でたバナナ? いや サップという品種のバナナ? 市場でおばちゃんたちは、これこれと指さし、渡してくれたので、料理用バナナはゲットできてる。これを、茹でるってことかな? と勝手に解釈しました。ただ問題は、レシピに茹で方が書いていない。「何分?」「皮付き?」「水から?お湯から茹でるの?」完全に混乱です。 でもこれが面白いんですね。日本の料理本がいかに親切か、よくわかりました。少ないコメントながら適切な言葉選び、表現。それこそ昔は、江戸時代の料理本も、今読むと、決して親切ではありません。現代の料理本には進化を感じます。つまり料理本の作り方には、日本とは違う文化や歴史があるのかもしれません。動画で見ればいいじゃん、と思うかもしれませんが、本から想像しながら、限られた情報で作る料理の中に楽しみもあるのです。 とりあえず、型崩れしないよう15分ほどで取り出してみた。皮を剥いたバナナはねっとり、ギュゥっとした食感。食べたら程よい酸味で美味しい。里芋とさつまいも、じゃがいもの間のような、不思議な食感。 これを調味料といっしょに、コトコト弱火で煮ていきます。 レシピにあった「riu riu」というのが「コトコト」=そよ風? のように、弱火で静かにという意味らしい擬態語ですね。口に出して言いたくなるベトナユ語、すごくかわいい。 さてお味は? 茶色く煮詰まったバナナは、みるからにバナナです。 ベトナムのベジタリアン醤油で甘辛く煮詰めたら、最後に油と胡椒をささっと回して仕上げます。 これはきっと、芋の煮っ転がしだな? と想像しながら味見したら、むにゅう〜と歯触りがあって、 甘辛さとともに酸味と胡椒の風味が、どさっと口の中に。噛むほどに、なんだろうこれ?の疑問が湧く。 そして後から、バナナの筋の苦味が舌をじゅわりぃぃぃ〜と痺れさせる。 ひいき目に見ても、おいしぃ・・・とは言えず、静かに箸を置く。 夜ご飯に食卓に何気なく置いてみたけれど、夫は「何これ〜!」と楽しそうに口へ放り込んだけど 「これはいいや」と言って、二口目はありませんでした。 ただこれはレシピが悪いのではなく、原因は私の理解不足にあることがわかりました。 というのも、その後、丁寧に調べていったら、Chuối sáp は、市場の蒸し器で蒸されて売られているバナナのことだったんです。 Chuối sápの正体 ▲ 市場で売られているサップバナナ そう、ベトナム人にとっては当たり前の蒸しバナナを勘違いして料理していた私。日本語で言うと、さつまいもではなく、蒸かし芋、というものが原材料に入っていたということ。市場で、しきりにおばちゃんたちが、あれこれ説明してくれていたのですね。 ベトナム語の壁を感じてはいますが、料理本から馴染んでいくのも楽しいもの。 Chuối sáp、この単語だけは、もう忘れそうにありません。 ▲ 皮を剥いたサップバナナ ただ日本のレシピのように、気を付けるポイントとしてただひとつ、 バナナの筋はしっかり取る、と書いて欲しかった。 さて次はどのページを試してみましょうか。楽しみが増えました。 ✏ 口に出して言いたい ベトナム語 〜料理編〜 日本語 ベトナム語 読み方(カタカナ) ベジタリアンご飯 cơm chay コム チャーイ ベジタリアン魚醤 nước mắm chay ヌゥオック マム チャーイ 弱火 lửa nhỏ ル〜ア ニョ〜ォ コトコト riu riu ズィウ ズィウ 煮る Kho コー – Next – 次回は——手先の器用な国だから?! ミニチュオ・プラモデルの世界。

2026/08/09

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サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第3回:仕立てる楽しみ、選ぶ楽しみ。ベトナムファッションの現在地

– Vol. 03 – 第3回:仕立てる楽しみ、選ぶ楽しみ。ベトナムファッションの現在地 仕立てる楽しみ、選ぶ楽しみ。ベトナムファッションの現在地 ベトナムで暮らしていて、一番贅沢だと思うこと、それは服を仕立てることの身近さ、です。 + + 市場や生地店で好きな布を選び、街の仕立て屋さんへ持ち込む。まだ画像生成AIなどなかった頃には、下手な絵を描いたりしながら、「袖はこのくらい」「丈はもう少し長く」と身振り手振りを交えて伝えていきました。 その結果、思い描いたものと少し違う服が出来上がることもあったけど、これもまた、ベトナムらしさ。好きな生地が自分だけの一着になる喜びは大きいものでした。 身長154センチの私と、182センチの夫。 チビとノッポの夫婦にとって、既製服には小さなストレスがつきまとう。 私には丈が長く、夫には袖や裾が足りない。 それが、自分の体に合わせて作ってもらうと、するりと収まる。服が身体に合うというだけで、 こんなに気持ちがよいものなのかと感動したのを覚えています。 生地代と仕立て代を合わせても、ワンピース一着が5000円ほどで出来上がることもあり、 日本では少し特別に聞こえるセミオーダーが、ベトナムでは日常のすぐそばにある。 今も街には、使い込まれたミシンがある。 小さな仕立て屋さんや、お直しを請け負う店先で、縫い手たちはこまめに手を動かしています。 私たち夫婦にも、近所にお願いするお気に入りの仕立て屋さんがいくつかあるんです。 けれど、ここ2年ほどで、街の服の景色が少し変わってきました 仕立て屋さんの魅力が薄れたのではありません。 既製服が、急に面白くなってきた、そんな感じです。 若い人たちの装いにも変化を感じます。 以前よりも、黒、白、グレー、ベージュといったモノトーンが目について 大きなロゴやキャラクター、目立つ柄に頼るのではなく、生地の質感やシルエット、 デザインで見せる服が増えてきた。 もちろん、これは私がホーチミンの中心部で見ている限りの印象です。 それでも、街の空気が変わったと感じるには十分でした。 ベトナムは世界有数の縫製大国。 その土台の上に、今、ベトナム発のブランドが次々と育っているようです。 海外でも知られるCONG TRI、ミニマルで構築的な服を見せるGIA STUDIOS、若い世代の感覚を映し出すFANCì CLUB。海外のランウエイやセレクトショップで名前を見かけるようになってきた。 そして、現在のホーチミンやハノイには、独自の世界観を打ち出す旗艦店やセレクトショップも増えています。 その変化を特に実感したのが、ホーチミン中心部、 Union Squareの地下に広がるセレクトショップ。 フロアには服だけでなく、靴、時計、バッグ、雑貨、香水まで、ファッション全般のアイテムが並ぶ。それぞれの売り場は独立しながら、緩やかにつながっている。目的を決めずに歩き回り、気になったものを手に取る楽しさがある。 無機質でモダンな空間に、低く静かに流れるミニマルなエレクトリック・サウンド。 「ここ、本当にベトナム?」 一瞬、そんな気分になる。 数年前には、こんな空間を想像していなかった。 買い物の仕組みも面白い。 気に入った服が決まると、店員からバーコードの付いたカードを渡され、レジで待つよう案内される。売り場に飾られているものは試着用で、在庫があれば倉庫から新しい商品が届く。 その商品を運んでくるのは、ヘルメットをかぶり、キックボードに乗った店員たち。 広いフロアを、商品を入れたバッグ持ってスーッと滑り込んでくる。歩かないですね。日本ならまず安全面が話題になりそうですが、バイクが日常に溶け込んだベトナムらしい軽やかさがあって親近感。 届いた服を手に取り、改めてサイズや縫製を確認してからお会計。明快です。 この店で、私が選んだのはベトナム発ブランドの二着。 一着は、MONO TALKの淡いグリーンのシャツ。 胸元を細やかな美しい襞で立体的に見せている。派手ではない。けれど、着ると柔らかな布が身体の周りで静かに動く。価格は約4800円。 もう一着は、DECEMBER CHRISの茶色いノースリーブトップス。 こちらは張りのある生地を使い、皺の寄せ方と裾のふくらみで立体感を作っている。 最近人気のバルーン型ですが、控えめに膨らませ、身体に沿って自然に立ち上がり、布量を計算していることが伝わってくる。価格は約8000円。 どちらも、「ベトナムにいるから着る服」ではない。日本へ帰るときにも持っていきたい、 普通におしゃれな着として着たい! そんな気持ちが動いて迷わず選んだもの。 この時私は、完全に日本のセレクトショップで買い物をしているような気分。 シルエットを眺め、生地に触れ、裏側の縫製を見る。 どう着ようかと考え、最後に値札を確認する。「え?」、一瞬、脳がバグる。 「あ、ここはベトナムだった」と、値段を見て思い出す。 もちろん、ベトナムでは決して誰にとっても安い価格ではない。それでも、日本で同じように生地や立体裁断に工夫を凝らした服を探す感覚で見ると、うれしい戸惑いが残る。 以前なら、気に入った形を見つけたら、生地を探して仕立て屋さんへ相談していたかもしれない。今は、そのまま着たいと思わせる既製服がある。そして服を買ったというより、ベトナムの変化を持ち帰った、という気持ちが湧き上がる。 仕立て屋さんで、自分の身体にぴったり合う一着を作る喜びと、 若いデザイナーが生み出した完成された服を、自分の感覚で選ぶ喜びがある。 どちらかが消えたのではない。服を楽しむための枠が、ひとつ増えた。 仕立てる国から、選ぶ国へ。 正確には、仕立てる楽しさを残したまま、選ぶ楽しさも育ってきた国へ。 ベトナムファッションは、まだ変化の途中段階。 このデザインと価格のバランスも、数年後には変わっているかもしれない。 そう思うと、また一着、手に取ってしまいそうにもなる。 ベトナムでの買い物は、ますます楽しい。 そして、これからどんな服が街に現れるのか。しばらく目が離せませんね。 – Next – 次回は、ベトナム料理本が楽しい! です。

2026/07/17

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サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第2回:市場の流儀 ―ネギとパクチーの謎―

— Vol. 02 — 第2回:市場の流儀 ―ネギとパクチーの謎― 市場の流儀 ―ネギとパクチーの謎― Xin chào。街の拾いものを書き留める「サイゴン雑記」。 第2回は、ローカルの八百屋さんで買い物をすると、最後にポンっと袋へ入れてくれる"あの野菜"の話です。 ✦ ✦ ✦ 🎧 まずは、こちらの音を少し聴いてみてください。 #02 yaoya ※QRコードからもお聴きいただけます。 なんの音かわかりましたか? これは、いつもの八百屋屋さんでの会計風景です。 ガサゴソ。 品物をビニ袋に入れてくれる音。 「姉さん、8万ドンね〜」 そして間を置いて 「これいる?  hành lá ハイン ラー、 ハイン ラー!」 そう、店主が差し出したのは、ネギでした。 30代くらいの夫婦が営む小さなお店は商店街の一角にあります。早朝6時には開店。 お昼には棚がスカスカになるほどの人気店です。 にこやかで感じのいい夫婦とのやりとりは、片言のベトナム語を実践練習できる場でもあります。 でもここまでくるには、ちょっと時間がかかりました。   というのも、ローカルの市場、最初の頃は怖さを感じたこともしばしば。 市場の女性は強気です。 数字が聞き取れない。 少量だけ欲しいと言いにくい。 「それだけ?」みたいな顔をされることがある。 市場のおばちゃんの勢いに負けて、余計なものまで買ってしまうこともある。 とにかく押しがつよい。 ということで、市場へ行くには気合を入れつつ出かけるも、今日もダメだった〜と打ちひしがれて帰宅することも度々ありました。 でも、そんな時期を経て辿り着いたいきつけで、毎回、日本との違いを感じる点があります。それは、品物を袋に入れてくれ、最後にやってくる。 ネギとパクチーコンビです。 頼んでいないのにネギあるいはパクチー。 いや両方セットで、 ポン! と袋へ入れてくれる。 最初はオマケ? お釣りがわり? 計量しているので値段の微調整かなと思いました。 ただ、しばらく通っているうちに、なんだかそうではなさそう・・・とモヤモヤしてきた。 "なぜベトナムの八百屋さんは、最後にネギとパクチーを渡すのだろう?" あれこれ考えていたら、日本でいうとアレのこと? が見えてきました。 アレ、それは"お刺身についてくる、ツマや大葉のこと" 刺身が入ったトレーを見て "やった〜、大葉サービスしてくれた〜" とは思わない。 美味しく見える、食べるための一部であって、刺身の盛り合わせにはなくてはならない存在。 つまり、ベトナム料理にとって、ネギやパクチーは単なる野菜ではないのでは? スープにも。炒め物にも。麺にも。 最後に少し散らすのがお決まり手順。 これにて、料理が完成! そんな合図みたいなもの。 量は少ないけれども、これがなければ整わない、そんな存在。 ということで、最後にくれるネギとパクチーの最強コンビ。 あれはオマケではない。お釣りでもない。 ベトナム料理にとって、ないと落ち着かない定番の見守り野菜。 「今日もごはん、おいしく作ってね〜」という店主からの挨拶がわりかな、と思っています。 ▲ この日はこれで8万VND=480円くらい。ネギは普段の倍! 多めにくれました。 🧺サイゴン暮らしメモ:ローカル「行きつけ店」を見つけるコツ ✓ 早朝スタート、午後には閉まりそうな店(鮮度良好な品物を扱うため人気) ✓ 少量買いを歓迎してくれる、欲しい分だけゲットできる店(半分や4分の1など快く切ってくれるサービス) ✓ 漬物や蒸し野菜などがあるお店は工夫上手 ✓ 店主との相性(異性を選ぶと、あたりが優しいことも…) ✓ ニコニコ現金払いが基本、細かいお金、持っていこう! — Next — 次回は——オーダーメイドか既製服か、ベトナムファッションの変化について。

2026/06/13

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サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第1回 「はじめまして、頼りになるベトナムの台所!」

— Vol. 01 — 第1回:はじめまして、頼りになるベトナムの台所! はじめまして、頼りになるベトナムの台所! Xin chào。(シン・チャオ)。このコラムを担当するライターの MIZUHO です。 ベトナム・ホーチミンに暮らし始めて、5年ほど経ちました。 読んでくださっているあなたは、もしかして赴任したばかりでしょうか。 それとも、何年も過ごしてすっかり街に慣れてきた頃合いでしょうか。 私がホーチミンに腰を据えたのは、コロナ禍を経て活気ある街を取り戻す時期。何かと圧倒されていました。 ひっきりなしに走るバイク、市場のざわつき、昼の強い日差し、スコール前の湿った風。 でも今は、そのすべてが「生活のリズム」になっています。 知らないうちに、この街に体ごと馴染んできました。 このコラムは、そんな街の拾いものを書き留めた雑記帳です。どうぞお付き合いください。 ✦ ✦ ✦ 🎧 ベトナムといえば、まずはこちらを。QRコードから音声をお聴きください。 #01 ホーチミンの朝市の音 これ、なんの音かわかりましたか? ホーチミンにあるローカル市場の入口の音。朝5時すぎには、もう街が全力で動き始めています。 市場の近くに住む私にとって、最初はただの騒音でした。でも今では、このノイズを聞くと、大袈裟に言えば「ああ、今日も生きてるな」を実感させてくれる、おなじみのアラームです。 早朝から始まるカオスは、みるみる育ち、7時すぎにはピークを迎えます。飛び交う言葉、すり抜けるバイク、クラクション。交通ルールなんてあってないようなものの、一定の秩序は満たされている不思議な世界。ここに立つと、なぜか元気が湧いてくるんです。 そして市場の熱気を浴び続けていくと、だんだんお腹が空いてくる。ホーチミンは音だけじゃなく、胃袋まで騒がしくしてくれる街で—— ✦ ✦ ✦ お父さんとお母さん、家族で切り盛りしている小さな食堂。ランチに向けて仕込まれた料理が、昼前にはずらりと勢揃いします。 ▲ 昼前のお惣菜コーナー。選ぶのが楽しい。 店先には、アルミの大きなバットが並び、煮魚・炒め物・揚げ物・野菜料理がぎっしり。とにかくラインナップの多さに驚きます。しかも家庭料理の茶色系が多いので、美味しいに決まっている、という安心感が漂います。 ぜひ、のぞいてみて下さい。そこには見覚えのある料理もあるはず。 🍳 ゴーヤーと卵炒め 🥩 豚肉の角煮 煮卵入り 🍗 鶏肉の唐揚げ 🐟 イワシのトマト煮 🥢 ひき肉を挟んだ厚揚げ煮浸し 🫚 鶏レバーの生姜煮 日本の定食屋でも見かけるものですね。とはいえ、やや上級者向きの「謎の貝を炒めたもの」「カエル肉を煮こんだやつ」なども、定番ものとして並んでいたりします。そこはそこでスルーしたり、おつまみ用に少しだけ買ってみたりと自由な選択を。 そして、横には大きな炊飯ジャー。さらに隣には、毎日違うスープを作る寸胴鍋もあり、食欲をそそられます。 指差しひとつで、なんとかなる こうしたお店は、ランチに人がどっと押し寄せます。しかも、男性客が多い。バイクで駆けつけ「あれとあれ〜」と店主に伝えると、小さなテーブルに山盛りご飯とメイン料理、スープが届く。わしゃわしゃと豪快に口に放り込んでいく見事な食べっぷり。 でも女性も、もちろん利用してますからご安心を。私のようにテイクアウトを頼みに来るお母さんたちも多いので、ひとりで行っても問題なし。 ちなみに私は、夜ごはん用に追加で「あのおかずも」「これも」と、だいたい予定より多く買いがち。いろいろと食べることで、ベトナム家庭料理の味付けもわかりますからね……を言い訳に。 ✦ ✦ ✦ ✏ MIZUHO'S NOTE コムビンザン攻略メモ ▶ 便利なひと言 日本語 ベトナム語 読み方 これください Cho tôi cái này チョートイ カイナイ 持ち帰りで Mang về マン ヴェ おいしい! Ngon quá! ンゴン クア!(← これ言うと喜ばれます) ▶ 費用の目安(ホーチミン ローカル地域) ※都心部・観光地域だとレストラン並みの料金の場合あり おかず1品:30,000〜50,000 VND(約180〜300円) ごはん+箸休めの野菜料理と日替わりスープ付き テイクアウトは、おかずだけでも購入可。1品 30,000 VND〜、量を多めにしてくれます — Next — ローカル市場でお買い物するときの定番コンビ "ネギとパクチー" の存在感。 嬉しいおまけ?! これが意味するもの、について感じたことをお届けします。

2026/06/02

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野本瑞穂のサイゴン雑記

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