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サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第5 回:手のひらに収まるベトナム。ミニチュアの世界

2026/09/17

野本瑞穂のサイゴン雑記

サイゴン雑記 〜暮らしの断片を拾ってみたら〜 第5 回:手のひらに収まるベトナム。ミニチュアの世界

– Vol. 05 –

第5 回:手のひらに収まるベトナム。ミニチュアの世界

手のひらに収まるベトナム。ミニチュアの世界

Xin chào。(シン・チャオ)。 コラム担当、ライターの野本瑞穂です。
今回は、ふらりと入った雑貨さんで見つけたミニチュア玩具から見えてきた、あれこれについて、ご紹介します。

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雑貨店で見つけた、組み立て玩具

▲ 雑貨店で見つけた、組み立て玩具

出会いは、かれこれ3年ほど前。雑貨屋さんにディスプレイされていた小さな自転車。
行商のおじさん、おばさんが引っ張る自転車の荷台には、売り物の綿飴やお花、金魚など。
よく見ると、ホーチミンの街で日々目にしている風景が、そのまま手のひらサイズになっていたのです。

「かわいい!」

これ欲しい。でも値段を見ると、一つ30万ベトナムドン(1800円くらい〜2026年9月付)ほど。
ひとつ買ったら、きっと並べたくなる。並べたら、また次が欲しくなる。
雑貨好きには危険な予感しかしない。その日は、いったん手を止めました。

ところがしばらくして、インターネットで同じようなミニチュアを発見してしまい・・・。
しかも「あれ? こっちは安い」
よく見ると、完成品ではなく、自分で作る組み立てキットでした。
「面白そう! 楽しそう!」というわけで、さっそくいくつか、取り寄せてみました。

取り寄せた、組み立て玩具

▲ 取り寄せた、組み立て玩具

届いたのは「HÀNG RONG(ハンロン)」シリーズの、お肉の焼き肉を使ったバインミー屋台。(豚の焼き肉、ローストポークの屋台ですが中には鶏肉も、この看板との不一致さもベトナムらしいです)
他にも、ベトナムの街で見かける行商や屋台を再現したもので、廃品回収屋さん、ジュース屋さん、
自転車に商品を積んだ行商……。いろいろな種類がありました。

箱には「Trở Về Tuổi Thơ」とあって「子ども時代に帰る」といった意味。

いいじゃないですか〜と、そっと箱を開ける……。

木の板。小さな部品。針金。紙。布。そして、かなり細かい説明書。
豚の丸焼きなんて、指先ほどの大きさ。
屋台の骨組みを作り、色を塗り、看板を貼り、針金を曲げ……。

これは、なかなか手強い。

ひとまず説明書を広げ、部品を眺め、「なるほど」と納得し、そっと、また箱に戻しました。

組み立て玩具のキット内容

▲ 組み立て玩具のキット内容

そして少し忘れかけていたのに・・・最近、書店に行ったらまた出会ってしまった。
雑貨コーナーに大きく紹介されていたのです。
思わず見入って、懲りずに、別の種類も購入。

なぜなら、ミニチュアになっているのが有名な観光名所ばかりではなく、
新聞スタンド、米屋、床屋、フーティウの屋台、バイク修理店、行商……。

いつもみているベトナムの風景が、小さくなっているかわいさに心を持って行かれてしまいました。
これは、ベトナム文化が手のひらに収まるアイテム!

日本にも、小さなものを愛でる文化は昔からある。
『枕草子』には「なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし」とあり、江戸時代には精巧な雛道具。
現代ならプラモデル、食玩、カプセルトイ。

小さなものに惹かれる気持ち。日本人にはなんだかわかる気がします。
日本とベトナム。小さなものを作り、細部まで凝り、それを眺めて楽しむ。
こういうところ、どこか似ているのかもしれません。
ただ、ベトナムで小さくなったのは、屋台であり、行商の自転車であり、街角の食堂。
今日も外へ出れば、その「本物」が街を走っています。

それにしても、こんなものを作ったのはどんな人なんだろう。

小さな世界を作った人

組み立て玩具 立ち上げのグエンさん

▲ 組み立て玩具 立ち上げのグエンさん

ちょっと調べてみたら「Thế Giới Tí Hon(小さな世界)」を立ち上げた
Nguyễn Phúc Đứcさんという人にたどり着いた。

1989年生まれ。建築や美術を専門に学んだわけではなく、DJやマーケティング、配達などさまざまな仕事を経験したという。子どもの頃、父親からもらった木製の小さな家の模型を思い出したことが、この仕事を始めるきっかけのひとつ、だという。
しかも、面白いのは、最初に作ったのがサイゴンではなく、寿司店など日本をテーマにしたミニチュア。
でも、それはなかなか売れなかった。

本人は後のインタビューで、みんな「好き」とは言ってくれるけれど買ってくれなかった、
それは模型に人を動かす「感情」がなかったからではないか、と振り返っていました。

そこで、彼が思い出したのが、自分が育ったサイゴン。
子どもの頃に通った路地の雑貨店を作ってみたところ、今度は大きな反響に。
そこから彼の記憶にあるサイゴンの街を次々と小さく再現していった。
彼が掲げているのは、「ベトナム人に、もっとベトナム文化を愛してもらう」という思い、でした。

なるほど。私が最初に「かわいい!」と足を止めたのも、単に小さいからではなく、そこにいつも見るベトナムの風景、文化を感じ取ったのかもしれません。
だから、このミニチュアには妙に惹かれるのでしょう。

飾られた組み立て玩具

▲ 飾られた組み立て玩具

今では、完成品もあちこちの場所(雑貨店、書店、ホテルのお土産売り場など)で購入することができます。
日本へのお土産にしたこともあり、喜ばれました。「プラモデル作るのが、好きそう〜」と思う人には、迷わず組み立てキットをお土産に渡したら、とても喜ばれ、本当にきれいに完成させた人もいました。

一方、我が家では――。

箱を開けただけのものが、まだある。

ベトナム文化が手のひらサイズになって、まだ箱の中で出番を待っている。

……そろそろ、作らなくては。

✏ 口に出して言いたい ベトナム語 〜雑貨編〜

日本語 ベトナム語 読み方(カタカナ)
小さな世界 Thế Giới Tí Hon テー ゾーイ ティー ホン
子ども時代に帰る Trở Về Tuổi Thơ チョー ヴェー トゥオイ トー
行商 Hàng rong ハン ゾン
こんにちは Xin chào シン チャオ

– Next –

次回もお楽しみに。

野本瑞穂(NOMOTO MIZUHO)

執筆者

野本瑞穂(NOMOTO MIZUHO)

自己紹介
2021年よりホーチミン在住。 日本では20年以上、テレビの構成作家、ラジオディレクターとして番組制作に携わる。直近ではNHKラジオ「高橋源一郎の飛ぶ教室」「伊集院光の百年ラヂオ」を担当。これまでに200人を超える作家、音楽家、芸人、研究者らへのインタビューやドキュメンタリー制作を通じ、人々の声に耳を傾け、その人らしい言葉を紡ぎ届けてきた。現在はベトナム・ホーチミンで暮らしながら人々の営みや街の空気を観察する日々を満喫。

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