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ベトナムで目指すべき「セミ・ペーパーレス化」

2026/02/07

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ベトナムで目指すべき「セミ・ペーパーレス化」

ベトナムオフィスはペーパーレス化できるのか?
世界のビジネスシーンでは電子文書化が進んでいます。しかし、ここベトナムのオフィスに目を向ければ、デスクは常に書類の山、バイク便ドライバーが紙の書類の入った封筒の配達や荷受けに毎日オフィスに出入りしています。

「物理的証拠」への過度な依存
ベトナムも電子請求書(E-invoice)の義務化など、政府主導のデジタル化は進んでいますが、契約や発注書類のペーパーレス化は進んでいません。その最大の理由は、「物理的証拠」への過度に依存する商慣習にあります。「原本(Original)に印(Stamp)のある書類が最上位の証拠能力を帯びる」「紙は残る」という古い商意識が色濃く、また税務監査時に「紙で出してください」と言われるリスクを恐れて結局「紙も残しておく」慣例が、ペーパーレス化への足かせとなってます。また、ローカル会社の電子サインの普及率の低さも、双方電子署名による電子保管の機会を阻み、障壁となっています。

インフラとセキュリティへの不安
ベトナムはインターネット普及率こそ高いものの、企業レベルのデータのセキュリティ対策やクラウド活用の理解度は高くありません。「紙の原本を置いておかないと不安」という意識から、ペーパーレス化には踏み切れない企業が多くを占めています。結果として、AIツールを導入しながらも、原本はキャビネットへ眠らせるという、歪なデジタル化が進んでいます。

ベトナムで書類はいつまで保管する必要があるのか?
ベトナムの書類保管義務について詳しく見ていきましょう。下記は2026年1月現在(会計法、政令174/2016/ND-CP、改正労働法・個人データ保護法等)の書類保管期限です。ベトナムの税務当局は過去5〜10年分を遡って調査することが一般的で、特に経費の根拠となるインボイスや契約書は一律10年保管運用が安全とされています。電子署名のある電子文書または紙による原本保管が義務ですが、上述のベトナム特有の古い商意識により、オフィスの執務デスクには、現在も「紙の山」があるのが実情でしょう。

会計・税務書類(起算点:会計年度終了日)

最低 5年間 : 会計帳簿の作成に直接使用されない内部管理用の書類。(管理用の入出庫伝票、見積書、社内決裁書など
最低10年間:    会計帳簿の記録、財務諸表の作成の根拠となる証憑類。契約書、インボイス、銀行残高証明書、総勘定元帳、監査報告書、税務申告書など)
永久保存:         企業の歴史的価値・重要性を持つ書類。年度財務諸表原本、国家プロジェクト関連の会計書類、国防・安全保障関連)人事・労務書類(起算点:退職日または作成日)

5年〜10年 : 出勤簿、残業記録、休暇申請、安全衛生教育記録。
70年〜75年:(実質的に長期/永久)従業員の給与台帳、人事記録(履歴書、学歴、雇用契約書、社会保険記録)。
ベトナム公文書局基準で、年金や社会保険の計算根拠書類は長期保管

法務・会社基本書類(起算点:設立日より)

永久保存 : 投資登録証明書 (IRC)、企業登録証明書 (ERC)。会社定款、株主名簿、役員会議事録、出資証明書。ライセンス関係の原本。

運用の重要ポイント
原本保管が原則 : 電子署名がある電子文書を除き、紙の原本保管が義務。
国内保管: 原則としてベトナム国内の事務所に保管。
廃棄の手順 : 期限が切れた書類の勝手な破棄は不可。社内に「廃棄委員会」を組織し、「廃棄議事録」を作成し永久保存。

「手作業」が安価であるパラドックス
もう一つの原因は、ベトナムの比較的安価な労働力です。欧米や日本では、紙を管理保管する「人件費」や「オフィス賃料」のコストが極めて高いため、投資をしてでもペーパーレス化を進める経済的な合理性があります。しかしベトナムでは会計や総務スタッフがファイリングして倉庫に運ぶ>コストがDXシステムを運用するコストよりも低く見積もられています。この判断の多くは必要な書類を探し出すまでのロスタイム、保管スペースがオフィス面積を圧迫するデメリットと保管スペースの毎月の賃料、紛失劣化によるコンプラ・リスクを見落としています。

ベトナムでビジネスをされている皆様にとって、本来クリエイティブな業務に割くべきスタッフの労働時間が、紙の取り扱い業務に奪われている実態は、大きな損失と考えるべきでしょう。

今すぐできるハイブリッドな「次の一手」
ベトナムでのペーパーレス化への壁は高く、現実的に非常に困難です。そこで、取り組みやすいのが「セミ・ペーパーレス化」です。「セミ・ペーパーレス化」という言葉があるかどうかはわかりませんが、下記のような一段階緩い基準を設けて社内運用する手法となります。

社内ペーパーレス規則の制定: 税務や契約という対外書類は紙、社内申請承認フローはペーパーレスへ移行。
スキャニングの自動化:AI搭載のOCRで、受け取った紙をすぐデータ化、検索可能にする。「原本至上主義」の再定義: 紙で保管が必要な書類を再定義し、印刷や保管の運用ルールを厳格化。

ベトナムが「紙の山」から解放される日
ベトナムのオフィスが紙の山から解放される日はいつでしょうか?それは、「データの信頼性」を「紙の重み」より高く評するようになれた時だと思います。それがいつになるのかは誰にもわかりません。
あなたのデスクに積まれている「紙の山」は一気に崩すことはできません。今行うべきことは、セミペーパーレス化のマネジメントによって紙の山を低くする試みこそ現実的であると言えます。

吉越 誠一郎

執筆者

吉越 誠一郎

会社名
CRAFTEC VIETNAM CO., LTD.
業種
オフィスの内装工事やコンサルティング、PM業務、コンセプトデザイン、ITやセキュリティソリューション等、オフィス構築に関わる業務全般に従事。
自己紹介
CRAFTEC VIETNAM代表。早稲田大学在学中からバーテンダー修行。バー経営で反響営業の本質を学び、その後10年間住宅建築の営業職に従事。2017年ベトナム移住。フロンティアコンサルティング・ホーチミン支店長を経て、2025年 CRAFTEC VIETNAM設立。現在までベトナムで日系企業200社以上のオフィス構築を担当。

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