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オフィス賃貸契約の更新解約トラブル集
2025/12/15
オフィス関連
ベトナム関連

オフィス賃貸契約の更新解約トラブル集
日本とベトナムでは商習慣が大きく異なるため、こちらが無知であるほどトラブルのリスクは増大します。今回は、ベトナムで実際にあったオフィスの賃貸契約の更新時と解約時のトラブル事例をご紹介します。
事例1:更新拒否で退去を余儀なくされた
「まだ2年目なのに。出て行けと言われたら?」
念願のオフィスを開設して2年。内装にもこだわり、社員も増えてきてようやく事業が軌道に乗り始めた!そんな矢先・・・。契約満了が近づき、当然のように更新を申し出た。日本では自動更新が一般的だから、「このまま使い続けられるだろう」と思い込んでいた。
しかし、オーナーからの答えは。
「更新? できません。このビルは今後自社で使いますから。」
耳を疑った。
内装の減価償却がまだ終わっていない。引っ越しや新オフィスの内装にかかる追加コストを考えると、頭が真っ白に。
せめて移転費用や内装費用の一部を負担してもらえないかと交渉してみたが、
「デポジット(保証金)を返す以外は契約通りです。補償??契約書読んでください。補償の義務はありません。」
日本なら借主に有利な慣習があり、追い出されるケースはほぼない。
だがベトナムでは、オーナーの一存で契約更新の拒否が珍しくないことです。
こうして、事業の安定期に突然の移転を強いられることになる場合もありますので注意しましょう。
なぜ起きる?(背景解説)
- 貸主優位の商慣習:ベトナムでは契約更新は保証されず「自動更新」は基本的に存在しない。
- オーナー都合の変更:所有者が「自社利用に切り替える」「売却する」と決めれば、借主は退去せざるを得ない。
- グレードの低いビルほどリスク大:所有者の事情で急な方向転換が起こりやすい。
📌 ここがポイント(教訓)
- 「更新できる前提」で契約しない。
- 契約更新不可のリスクを前提に、移転コストを事業計画に織り込む。
- 日本の感覚で「居続けられるはず」と思い込まない。
- 契約書に自動更新条項を入れる交渉は難しいため、オーナー都合での退去も想定する。
📝 事前対策リスト
- 契約更新に関する条文を必ず確認(「更新できる」とは限らない)。
- 内装投資額は短期間で回収できる設計に。
- 物件選びの際は「所有者の事業方針」「売却の可能性」も調査。
- 長期利用が絶対条件なら、グレードの高い物件や信頼性あるオーナーを優先。
事例2:ベトナム語の契約書を読まずサインしてしまった・・・
「サインしてしまった一枚の契約書が命取りに」
契約の場に出された厚い契約書。すべてベトナム語で書かれていました。
「英語版もありますよ。ただ、公式文書としてはベトナム語が優先です」と伝えられた。
時間も迫っているし、迷いつつも、エージェントの「大丈夫ですよ」という一言で、
細かい条文を読み込む余裕もなく、内容を正確に理解しないままサイン完了。
それから1年後・・・・。
事業が拡大し、広いオフィスに移転する必要が出た。
ところが解約を申し出た瞬間、オーナーはこう言った。
「途中解約??そんなの認めませんよ。そちらの都合で出て行くなら、保証金は没収し、残りの契約満了月までの賃料も全額支払ってもらいます。」
驚いて契約書を読み返すと・・・確かにその条文が!
目を凝らせば、途中解約時の違約金は「残り契約期間の賃料全額」と明記されていたのだ。
「嗚呼、もっと早く確認しておけば…」
サインした一枚の契約書が、会社の資金繰りを大きく揺るがす結果となった。
なぜ起きる?(背景解説)
- ベトナム語優先条項:契約書が多言語併記でも、最終的にベトナム語版が法的効力を持つケースが一般的。
- 途中解約は原則不可:ベトナムでは、借主側からの途中解約は基本的に認められない。
- 強気な貸主の解釈:保証金没収は当然、さらに「残存期間の賃料請求」まで発生するケースが多い。
📌 ここがポイント(教訓)
- 契約書は必ず専門家や信頼できるエージェントに確認してもらう。
- 英語併記があっても、ベトナム語が優先される可能性が高い。
- 途中解約条項は、最も重要かつ見落としがちなリスクポイント。
- 契約前に「解約条件」「違約金」を必ず確認すること。
📝 契約書チェックリスト
- ベトナム語優先条項の有無
- 途中解約に関する条項(賃料何か月分が違約金?残り全額?)
- 保証金の返還条件
- 契約更新や貸主都合の解約条件
こうしたトラブルは、日本の商習慣との違いを知らないままベトナムでジャッジをしてしまったことで発生するトラブルです。こうしたトラブルを回避する上では、専門家の意見を仰ぐこと、日本とベトナムの商習慣の違いを事前に知っておくことが大切です。

執筆者
星 克彦
- 会社名
- STARTS INTERNATIONAL VIETNAM CO.,LTD.
- 業種
- 不動産仲介(住宅・オフィス・店舗・コンドミニアム・工場売買等)
- 自己紹介
- Starts International Vietnam General Director スターツコーポレーション(株) 新卒入社。 2013年ハノイ、その後インドネシア駐在。 2017年 ホーチミン支店長。 2024 年 COCOROサービスオフィスをホーチミン市1区のThe Nexus 内に開業。 2025 年 ベトナム法人代表。 対応分野;不動産仲介(住宅、オフィス、店舗、コンドミニアム・工場売買等)。 不動産コンサルテイング、サービスオフィスのお問い合わせ:hoshi@starts.com.vn WEB: https://kaigai.starts.co.jp/vietnam-hochiminh
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